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船が出港すると、思っていたより沖に出て
さっきまで見えたはずの港が見えなくなっていた。
「結構、沖まで出るんですね。」
「今日釣りたいのはマグロだからね。」
「ま、まぐろ？！」
私のリアクションが余程面白かったのか
大野さんは今まで見たことない顔で笑った。
「マグロって言ってもカジキとかじゃないから。」
「カジキだろうが何だろうがマグロ釣るって漁師じゃないですか…」
「船長は漁師だからね。」
私たちの会話が聞こえてたのか、
運転席に居た船長が背中を向けたまま
親指だけピッと上げてイイネボタンみたいなサインを見せた。
船長が漁師だからって…マグロって…
初心者の私は何ができるのよ…
小さい魚を釣って喜んでるイメージしかなかったから
楽しめるのか不安になってきた。
「ま、とりあえずやってみよう。俺が隣に居るからさ。」
船の上だといつもよりテンションが高めの大野さんに説得されて、釣竿を持った。
・
「…………。」
「……………。」
釣りに真剣なのか何も会話がなく
時間だけが過ぎていく。
あ〜海は広いなぁ。
大きいなぁ。
昔から聞く歌の歌詞を頭の中で棒読みして時間を潰していたときだった。
「あっ！え？！何？！」
私の釣竿の先がグイッとしなった。
「おっ！かかったかも！」
隣に居た大野さんは自分の竿そっちのけで
私の方に近づいてきた。
「こ、これどうしたらいいの？！」
「しっかり持って！手伝うから！」
「はいっ！」
言われるがまま釣竿を両手で握りしめると
私の後ろに来た大野さんが
抱き締めるように後ろから腕を回してリードと竿を持った。
えっ！ちょっ！これなに？
恥ずかしくて釣竿を握る手が緩むと
「しっかり持って！」
っていつもの大野さんらしからぬ激しい口調で言われてドキッとした。
ただ釣竿を握るだけで、ほとんど操り人形状態のまま
しばらくすると海面に大きい魚の影が見えてきた。
「あっ魚！」
「船長！網っ！」
大野さんの声に反応して船長が網で大きな魚をすくい上げた。
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作者名：みーにゃ
| 作成日時：2015年9月16日 22時
