碧の宝石 (ページ15)

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「急だったから個室取れなくてさ。カウンターだけど大丈夫？」

「誘ったのは私ですし、カウンターでも私にはもったいないですっ！」

目の前には板前さんと、お寿司のネタになるであろう美味しそうな魚が並んでいた。

「ここさ、刺身もうまいけど煮付けとかもうまいんだ。苦手なものとかある？」

「特にないです。」

「じゃあお任せにしていい？」

「は、はい。全てお任せします。」

「ふふ…緊張してる？」

「…ちょっと…」

ふふって笑った大野さんの顔に、一瞬ドキッとした。

こんな顔で笑うんだ…

「鰯ってさ、魚に弱いって書くじゃん？
本当に傷つきやすくて弱いからその名前がついたんだって。
だから鰯の刺身とか握りとかって新鮮じゃなきゃ食べれないし、鰯がうまい店は大抵何でもうまいよ。」

「へぇ、知らなかった。物知りですね。」

「魚だけはね。魚以外のことはあんまり興味ない。」

「自分で釣ったりとかするんですか？」

「うん。海ばっかりだけど、釣れたら持って帰って食ったりする。」

「えっ！魚さばけるんですか？！」

「う、うん。人並みには。」

すごい…私はスーパーで加工された魚しか買ったことない。

大野さん…恐るべし。

「魚釣りって楽しいですか？」

「俺はね。釣れたときの達成感とかたまんない。」

「へぇ…楽しそう。」

「………、今度一緒にいく？」

「えっ！そんな強要したつもりはないですよ？！それに初心者すぎて足手まといになりそうだし…」

「いや、全然俺は構わないけど…まぁ、無理にとは言わないよ。」

「あ…じゃぁ、今度お願いします。」

正直、魚釣りしてみたいって興味もあったんだけど、好きなことを楽しむ大野さんを見てみたいってのも気持ちのどこかにあったから
誘いを受け入れたんだと思う。