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『・・・孤爪くんは知らなくていいよ。』
そう言った後に後悔した。
彼は無言で玄関に上がると、ゆっくりと靴を脱ぎだす。その動作がまるで死へのカウントダウンのように見えたわたしは、リビングへ逃げ込もうと足を動かして、ドアノブを握ってー・・・扉は開かなかった。
「逃げれると思った?」
背後から聞こえてくる冷たい声。扉を押さえつける手が見える。ドアノブに手をかけたまま、わたしは身動きがとれなかった。
「俺が知らなくていいことって何?」
『こづめく、』
「下の名前で呼んで。約束したよね。」
視界の端に揺れる金髪が見える。
「俺以外の男と2人きりなんて危ないよ。」
すぐ耳元で声が聞こえる。
「クロも男なんだから。」
彼は扉を押さえる手を動かすと、両肘を壁についた。背中に胸板が当たる感覚がする。気づけば逃げ場なんてものは無くなっていた。
『・・・け、研磨は?』
「ん?」
『研磨は危なくないの?』
「・・・さぁ、どうだろうね。」
視界の端に映る金髪がゆっくりと離れていく。後ろを振り返れば、恍惚とした微笑みを浮かべる彼がいて。熱に浮かされた瞳を、じっとこちらに向けていた。
それは初めて見る顔。いつもとは違って艶めいた様子。距離の近さも相まって、わたしは顔が赤くなるのを隠せなかった。
「かわいい。」
研磨の指先が頬を撫でる。
そっとなぞるように触れられてこそばゆい。
「このまま閉じ込めれたらいいのに。」
不穏な言葉が聞こえてきて、思わずびくりと肩が震えた。どろどろとした感情が彼の瞳の奥で渦巻いている。
『け、研磨』
「・・・好きだよ。A。」
彼はわたしの顔を包むように手で覆った。
「今までも。これから先も。ずっと。ずっと好き。」
猫のように鋭い瞳がゆっくり細められる。
「・・・だから、逃げないで。早く俺のものになって。」
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なお - やばいね、、とっても好きすぎる、、やばぁ、、、推すわ (4月20日 9時) (レス) @page9 id: 4ebc7ce81e (このIDを非表示/違反報告)
かつどんちゃん。(プロフ) - 風丸さん» コメントありがとうございます。個人的に研磨君は重そうだなって思いながら書いていたので、そう言っていただけて嬉しいです😊 (4月9日 7時) (レス) id: 45cf3ca804 (このIDを非表示/違反報告)
風丸 - 自分のものになってほしいみたいな研磨君めっちゃ良かったです (4月3日 16時) (レス) @page9 id: 3542795748 (このIDを非表示/違反報告)
かつどんちゃん。(プロフ) - むのこさん» そう言っていただけて嬉しいです!コメントありがとうございます〜 (3月31日 19時) (レス) id: 45cf3ca804 (このIDを非表示/違反報告)
むのこ - 完結おめでとうございます!!!最推しの研磨きゅんがもっと好きになれました…!感謝です🙏 (3月31日 16時) (レス) @page9 id: 76119ca14c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かつどんちゃん。 | 作成日時:2024年3月24日 19時