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「着いたで。」
あっという間に時間は過ぎて、気づけば家の目の前にまで来ていた。
『ごめん治。ありがとう。』
シートベルトを外してドアに手をかけようとする。すると肩に何かが載ってきた。
「・・・A」
耳に当たる熱い吐息がくすぐったい。ドアを開けようと伸ばした腕を、するすると大きな手が撫でていく。
『・・・・・・治。』
「まだ元彼、引きずっとる?」
か細い声だった。
「まだ、あいつのこと好きなん?」
苦しそうな声だった。
「・・・なぁ。」
腕を撫でていた手が指先に絡まる。
『・・・・・・好きじゃ、ない。』
そう答えた瞬間、絡められた指先の力が強まった。
「・・・ほんまに?」
『ほ、んとうに!だから、離れて・・・』
「嫌や。」
首元に当たる髪がこそばゆい。
狭い車内にふたりきり。つい先日までは、こんなに近い距離感もいつも通りで気にしてこなかったのに。
無意識に握った手の中が、汗で気持ち悪い。
「昨日言ったよな。ずっと好きやったって。」
"言ったよな?"確認するように尋ねられて、わたしはゆっくり頷いた。
「なぁ、どうしようもないくらい好きなんや。」
指先に力が入ったと思えば、首筋に柔らかい感触と僅かな痛みを感じて。びっくりして身体が反射的にのけぞった。どうやら首筋に吸い付かれたらしい。
『おさ、む。』
離してと。そう言ってやりたいのに、喉の奥に張り付いて言葉が出てこない。上手く口が回らない。
「俺のことだけ考えて。」
昨日聞いたあの声のように甘い声。
「・・・今も、明日も、何十年後も。ずぅっと俺のことだけ見ててほしいんや。」
それはもはやプロポーズじゃないのか。
ぐりぐりと肩に載せた頭を押し付ける治は、飼い主に捨てられた仔犬のようだった。
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なお - ごっつい好きなんやけど、、、やっぱり、ヤンデレって最高!! (4月20日 9時) (レス) @page11 id: 4ebc7ce81e (このIDを非表示/違反報告)
かつどんちゃん。(プロフ) - よう。さん» コメントありがとうございます!沢山の作品の中からこのお話を見つけてもらえて嬉しいです😊 (4月9日 22時) (レス) id: 45cf3ca804 (このIDを非表示/違反報告)
よう。 - ドタイプの作品見つけた…!!天才ですね…(笑) (4月9日 22時) (レス) id: df66def1dc (このIDを非表示/違反報告)
かつどんちゃん。(プロフ) - 赤羽さん» そう言っていただけて嬉しいです!コメントありがとうございます😊 (4月9日 9時) (レス) id: 45cf3ca804 (このIDを非表示/違反報告)
赤羽 - クッッッッッッッッ!!‼‼‼‼神作だッッッッッッッッッッッ (4月7日 23時) (レス) @page9 id: b22b7ccd76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かつどんちゃん。 | 作成日時:2024年3月17日 8時