とくさつ短編集 (ページ9)

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不破諫に心配されるページ9

AAが対人工知能特務機関、A.I.M.$.に入隊してから約半年が過ぎた。
入隊当初は知人から、弱虫のお前が銃を持つなんて頭でも打ったのかと心配された。
夢に向かって猛勉強と厳しい訓練を行った末、当時重くて仕方なかった防護服は今や体に馴染んできている。

とはいえ、A.I.M.$.の任務は違反したヒューマギアの破壊だけではなかった。Aは人工知能特別法違反に関する捜査を中心に行っているため、銃を構えた経験は片手に収まる程度だ。

ライダーシステムの力が絶大なのか、隊長が優秀すぎるためか。いつまで経っても扱いは“頼りない新人隊員”で、社会の為に実力を発揮できる機会は無に等しい。

そんな事で頭を悩ませ続けていたある日、隊長が全治数週間の怪我をしたと同じ隊の人間から聞きつけ足早に彼のもとを訪ねた。
「不破隊長！」
当人、不破諫はA.I.M.$.本部にある隊員の休憩室に居た。ここ数日で任務が普段以上に忙しくなり、あまり使われなくなった休憩室だ。パイプ椅子に体重を預け、ギプスの着いた片腕を忌々しそうに睨んでいる。
不破はAに気付くと、珍しくばつが悪そうな顔を向けて目を逸らした。
「隊長、私も現場へ向かわせてください」
「却下だ。何度言ったら分かる」
「……貴方の部下、そんなに信頼出来ませんか」
決して機嫌が良いようではなかった。鬼の隊長に歯向かうのが怖くないと言えば嘘になるが、ここで引下がる訳にもいかない。
「…ほう？随分と生意気になったなA」
何となく予想した通り、静かな声をいっそう低くして不破はAを睨みあげた。しかしこの半年間、些細でもミスをしては怒鳴られていたAにとって怯むきっかけにはならなかった。負けじと視線を返しどうにか説得しようと口を開いたその時、不破はわざとらしく溜息を吐いた。
不破がパイプ椅子から立ち上がり、Aを見下ろす。Aは首を上へ傾けて視線を切らない。
「いいか、油断すれば一瞬で死ぬんだぞ」
「当然ですそんな事しません」
「仲間が守ってくれるとは限らない」
「自分の身は自分で守ります」
「無傷で帰るなんてほぼ不可能だ」
「覚悟の上でここに入ったんです」
それらは半ば脅しのような忠告だった。切羽詰まって苛立たしげな不破は、Aが違和感と疑問を抱くには充分な程彼らしくない。