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戻って来た荼毘は、首からタオルを下げて上裸だった。
両腕、右肩から胸部左首にかけて、腹部。
火傷なのか皮膚移植なのか、痛々しく爛れた皮膚は表面積の大部分を占めていた。
「何だよ、ヒトの体をジロジロ見るんじゃねえ。」
「あ…すみません。今更ですけど、シャワー浴びて大丈夫なんですか？」
「そんな頻繁には入らねえよ。」
珍しいもの見たさもあってか、荼毘の動きに合わせて視線も着いて行ってしまう。
しばらく見詰めていると、徐に近付いて来た彼のデコピンを喰らった。
「ぁたっ…。」
「視線がうぜえ。そんなに気になんのかよ。」
「見事な継ぎ接ぎだな、と…。」
「見事ねえ…。」
そう言いながら、彼は隣のベッドに腰掛けた。
マジックでもするように、虚空から握り拳を前に上げ、私に返したその指先には、先程洗面台に置き忘れたロケットペンダントがあった。
「あっそれは…！」
前のめりになって荼毘に手を伸ばすも、宙を掻いた。
空いた手に強く引かれ、私は彼のベッドに押し倒された。
強めの衝撃に瞬きをする間、彼は馬乗りになった。
「そんなに大事なもんなのか？」
「返して、下さい。」
目を合わせると、手首を掴む手に力が込められた。
ギチギチと皮膚の絞まる音が鳴り、眉間に皺が寄る。
彼の目が細められた。
「終始大事そうに持ってたよな。何年前の写真だ？」
彼は見たのだ、ロケットの写真を。
見ていないとは思わなかったが、詮索されるとは思わなかった。
「もう、何年も前で分かりません…。」
「お前と、「焦凍」だよな？これ。」
「っ"あの子"を、焦凍を知っているんですか…！」
髪の乱れるのも構わず起き上がろうとするも、手首が抑えられてベッドに引き戻される。
「知ってるも何も、ーー辟ｦ蜃阪?菫ｺ縺ｮ蠑溘□ーー。」
「………えっ…？」
何を言われたのか、頭が追いつかなかった。
ザザッと砂嵐が耳の奥で、頭の奥で鳴る。
「…そ、そうだとして…何で、此処に……」
「それ以上は言わねえ。
アンタは、「轟家」と何がある？」
「…深い関わりなんて、ないんです。ただ、私が"あの子"を守ろうと、彼処から連れ出そうとする過程が、今の私なんです。」
「それ、本気で言ってんのか？」
「…え…？」
手首が、痛い。
「もし本気で今こうしている事が正しいと思ってんなら！
……糸黒A、アンタ相当"イカレてる"よ。」
その瞬間、私の体が震え出した。
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作者名：馬×3 | 作成日時：2021年10月7日 1時
