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ある程度の光しか射さなくなった所で、私は後ろを振り返る。
ここなら他の気配もなく、安全に彼等を殺せる。
「こんな奥まで逃げて…もしかしてそういうの期待してたりして。」
「鬼ごっこはもう終わりかな？」
「着いて来て頂き、有難う御座います。」
そっと取り出した能面を被り、状況の飲み込めていない二人に"個性"を放つ。
彼等は自身の身に何が起きたのか分かっていなかったが、遅れてやって来た痛みによってようやく自分達が死地に居ることを自覚した。
叫ばれても厄介なので、毛先を伸ばして口を塞ぐ。
その状態で彼等の喉笛を貫いた。
「私は今、機嫌が良くないです。自分達の運のなさを悔いて下さい。」
次第に髪から彼等の藻掻きを感じなくなり、二人を解放した。
ドチャリと地面に伏す肉体からは、喉元を中心に血溜まりが出来ている。
彼等に触れていた部分の毛先をナイフで切り落とし、周囲にゴミ箱がないか見回した。
「おいおい、この死体どうするんだよ椿。」
毛束を握りながら来た道へ目を向けると、壁に凭れる荼毘の姿があった。
「……どうしましょうか？」
「面白いもん見せて貰ったからな、燃やしてやっても良いぜ。」
「それならお願いします。次いでにこの髪も。」
荼毘の元まで行き、奥に倒れた二人には火が灯された。
蒼炎に焼かれる姿は正に「荼毘」と言えよう。
毛束を渡すと、ねずみ花火のように焼け縮れた。
路地裏に隙間風が吹いて灰が流れて行く。
寂しげに揺らめく蒼炎を見詰めた。
「…綺麗な炎。」
「おい、早く行くぞ。ボヤ騒ぎで人が来ると面倒だ。」
先を進む背中を追いかけ、仮面を外して隣に並ぶ。
「有難う御座います、助かりました。」
「…別に。
それで、確か召集の件だったよな。今日はこっちに残って明日帰る。」
「了解です。泊まる宛ては？」
「廃ビルを拝借すればいいだろ。」
「そう言うと思っていました。着いて来て下さい。」
「一体何処に行くつもりだよ。」
「ビジネスホテルを一室借りているので、そこで一晩明かしましょう。」
「アンタだけでいいだろうが。」
「いいから行きますよ。広い部屋なのでベッドも二つあります。」
「分かったから服引っ張るな。燃やすぞ。」
「"個性"の相性悪いんですから止めて下さい。ここから10分程で着きます。」
事前に確認しておいたホテルへ向かうと、受付と一言二言交した。
荼毘が居ても、すんなり通して貰える。
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作者名：馬×3 | 作成日時：2021年10月7日 1時
