【荼毘】落椿 (ページ1)

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家を飛び出て何年が経っただろうか。

数えるのも馬鹿らしく、正確な年月は曖昧だ。

その日暮らしをするのにも慣れ、今では大量殺人犯になってしまった。

こんな事をする為に家を出た訳では無いというのに。

最近は敵全体の動きが活発化しているのか、輩に絡まれる事が多くなり、私の殺害人数も増えていく一方だった。

そんな時、「義爛」という人物に声を掛けられた。

ーー「敵連合に入らないか」と。

最近ヒーロー殺しの一件があったからだろうが、真逆大物ブローカーに紹介される日が来るとは思わなんだ。

ステインの主義主張には思うところがあり、私は彼の誘いを引き受けた。

学生であれば夏休みが始まったであろう頃、移動にそこそこの時間を有する山岳地帯に招集が掛けられていた。

義爛サン伝いに聞いた話によると、「開闢行動隊」として雄英高校の指定生徒一人及び指定ヒーロー一名を誘拐して、林間合宿に混乱を招く事が目的だそうだ。

「雄英高校」と聞いて、嫌な予感は薄々感じていたのだ。

ーー"あの子"が居るかもしれない。

胸元のロケットペンダントを握り締め、集合場所である小高い丘へ向かった。

「待ちくたびれちまった。お前が最後だぜ、女郎蜘蛛の『椿』。」

「噂通りだね。」

「噂って何よ？」

「"長い黒髪、赤いストール。能面被りし椿の如き殺人鬼"、ってのが謳い文句。」

「能面可愛くないです。」

全員が集まったという事で、正確な結構日時と大まかな所定区域を指示された。

明日日没後、個人行動を行いたい者は山岳地帯全体からバランスよく配置され、統率の荼毘サンはトゥワイスサンと隠密、私はMr.コンプレスサンと生徒の誘拐を任された。

一日分の時間を交流に割くことなく、作戦範囲内の下見と回収地点の確認をしに向かった。