56 ページ6
「あの、降谷さん」
「如何かしましたか？」
「今日のお昼なんですが、冷蔵庫のものを勝手に使わさせて頂いたんですけど大丈夫でしたか？」
「ええ、使って頂いて構いませんよ。
食べたいものは食べられましたか？」
「はい、ご馳走様です。
それで、流石に降谷さんもその日作りたいものとかあるかもしれないので事前に使う食材は連絡しておきたいと思いまして。
差し支えなければ連絡先を教えて頂いて宜しいでしょうか？」
「ええ、分かりました。
何だか取引先と連絡先を交換する気分ですよ」
クスッと笑う彼に、如何に連絡先を聞く為の言い訳ならぬ理由付けが周りくどかったか自覚した。
数分も経たぬ内に連絡先を交換し終え、他にも思い出した事を対処しようとした。
「すみません、後もう一つだけあるんですけど…
スマホの位置情報サービスって如何切れば良いのでしょうか…？」
「逆探知の件ですか？それなら緊急時以外に使いはしませんよ？」
「あ、それはそのままで大丈夫です。
実は心配事がありまして、
お世話になる手前家を出る事になった経緯を説明すべきだと思うので、それを含めての相談です」
私が危惧していた事。
それは父に居場所がバレる事だった。
前にも言ったように、父は冗談半分で勘当を申し出たのだ。
それが出張から帰って本当に家出したというのなら、あの人は自分の利になるであろう駒を探し出そうとする筈だ。
あの人が私を諦める迄、出来る限り身を隠さなければならない故に、位置がバレる可能性のあるものは排除しておきたかった。
家出する事になった経緯を粗方説明すると、降谷さんは何処か納得したような表情で、心配だとか不安と言った感情は感じられなかった。
「それでしたら、機内モードにしておくのは如何でしょうか？
何かあった時僕が助けられる可能性は無くなりますけど、それならGPSは切れますし、お父様への位置バレの可能性は低くなります」
「成程、それでしたら基本的には機内モードにしておきますね。
凄い、用件人間になってしまいますけど……」
「僕も似た様なものですよ。
不定期に機内モードを切って通知確認をすれば、取り敢えずは大丈夫でしょう」
「はい、有難う御座います。
お仕事を遮ってしまいすみません」
「気にしないで下さい。
子供は守られるものなんですから」
何気なく放った彼の言葉に、勝手に傷付いている自分がいた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 161人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
馬×3(プロフ) - リンさん» そんな事を言って頂けて嬉しい限りです。まだ語彙力が低い為上手い言い回しが出来ぬやも知れませんが、精進して行きます。 (2020年5月18日 21時) (
レス) id: dfb05b741d (このIDを非表示/違反報告)
リン - 洗練された文章のような印象を受けて、お話に引き込まれました。とても面白いです！更新楽しみにしてます。 (2020年5月18日 21時) (レス) id: 73f2c7a15b (このIDを非表示/違反報告)
馬×3(プロフ) - アイスあるさん» 有難う御座います。自己満なので、暖かい目でお願いします(/// ^///) (2020年5月14日 21時) (レス) id: dfb05b741d (このIDを非表示/違反報告)
アイスある - すごい面白いです！更新頑張ってください！ (2020年5月14日 20時) (レス) id: 38b2fa8d4e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：馬×3 | 作成日時：2020年5月11日 14時
