嗚呼、無常。 ページ10
久作を乗せた列車が駅から去ると、太宰さんは放られた杖を取って来てくれた。
そうして、手の平で久作に口付けられた部分を乱暴に拭った。
至極不機嫌そうに私を起こし、敦さんに声を投げた。
「行くよ敦君。」
「………。」
「立つんだ。」
「駄目だ……
僕は駄目だ……
僕は居ちゃいけなかったんだ……」
自分の存在が他者に迷惑を掛けると云う意識程、生きる中で辛い事はない。
敦さんは今迄そういう環境で育った、そういう憐れな境遇の子だ。
然し歳が近いと云う事もあり、其の事が可哀想に思えない私は彼の不幸に共感出来ない。
其れは太宰さんも然り。けれど何処か怒ったような顔をして、敦さんの頬を叩いた。
「君から過去を取り上げる権利は私にはない。
だが偶には先輩らしい助言でもしよう。
自分を憐れむな。自分を憐れめば、人生は終わりなき悪夢だよ。」
淡々としているけれど、敦さんを叱責する姿は確かに先輩らしい。
私は彼に叱責された事などなかった為に、何処か新鮮さを覚えつつ、亦既視感も感じていた。
「さあ、そろそろ反撃といこう。此方も手札を切るよ。
三百ある中で一番刳い鬼札をね。
此の戦争に、政府機関を引き摺り込む。」
「……程々にして上げて下さいね。」
「んー？」
「はぁ…。
敦さん、お二人を連れて行きましょう。」
「でも、太宰さんは…？」
「なあに、お役所勤めの
終わり次第新しく指示を出すから、其れ迄拠点で待機しておいて。」
大人しく太宰さんの指示に従い、私達は退却の準備をする。
敦さんがナオミさん達に手を貸そうにも、先程から一刻も経っていない為やや警戒されていた。
拠点に戻ってからも此の調子だなんて考えたくもなく、私から話題を持ちかけた。
「…却説、ポートマフィアも「組合」も今は退いた状況ですけど、春野さんとナオミさんは先ず与謝野女医に診て頂きましょう。
其の後私がお二人の下宿先に荷物を取りに行ってきます。
敦さんは春野さんを車まで運んで下さい。
ナオミさんは歩けますか？」
「え、ええ。問題ありませんわ。」
「では拠点へ向かいましょう。」
駅に来るまでは流石に距離が遠く、社から拝借した社用車を運転して此処まで来た。
車内の空気の重さに面倒を感じつつ、拠点へ着く頃には如何でもよくなっていた。
「与謝野女医、いらっしゃいますか。」
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馬×3(プロフ) - kajtuuwnさん» 更新障害の所為か外したのにオリ/フラが表示されていたみたいですね。確認したところ外れていたので、現在は問題ないかと思われます。ご指摘頂き有難う御座います。 (2022年7月18日 8時) (
レス) id: 85cef96c0c (このIDを非表示/違反報告)
kajtuuwn(プロフ) - オリ/フラ立ってます。外して下さい (2022年7月18日 7時) (レス) id: 08bd233888 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：馬×3 | 作成日時：2022年7月18日 0時
