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再び車に揺られてやって来たのはレストラン。
照明が煌びやかで眩しかったけれど、それ以外の内装は落ち着いており、窓から臨む夜景は綺麗だった。
離れた席の客など気にならないし、
気にすれば父の機嫌を損ねる。
父といる時は他人を見てはいけない。
私は確かに駒だけれど、その駒一つに父は独占欲を持つ。
一体父はどれだけのものを独占したら気が済むのか。
心の中で悪態を付いた。
一頻りのテーブルマナーは覚えさせられたので、運ばれた料理を難無く食す。
「美味しいかい、A」
「はい、とても美味しいです。
良い塩加減で食べやすいです」
聞かれれば求められた言葉以上の返事をする。
そうすれば父は満足気に微笑む。
然し父も暴君では無い。
美味しくないものは素直に答えないと、それも彼の機嫌を損ねる事になる。
素直に口に合わないと言えば、「残して良い」という。
それを優しさと捉えてしまいそうになる自分を律した。
「土曜の夜は私の仕事の関係者ばかりだけれどね、
もし気に入った人がいれば言ってくれ。
好い人ならばお見合いをさせよう」
「有難う御座います。
もしそのような殿方がいれば御願いします」
やんわりとお見合いを勧めてくる。
お見合いをしないと言う選択肢はないのだ。
譲っているようで一つも譲らない。
安室さんと同じだけれど、同じでない。
ーー"何故彼の事ばかり考えるのだろう。"
物憂げな気持ちになりつつ、それを顔に出す事は一切なかった。
私を揺らす父の車は、酷く乗り心地が悪かった。
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作者名：馬×3 | 作成日時：2020年4月25日 3時
