私は''安室透''と言う男を嫌う。【安室透】【降谷零】 (ページ32)

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ここ数日のストーカー紛いの行為の成果があり、私は安室さんの情報を多少なりとも把握出来た上に、

若干の牽制をする事が出来た。

私は相手に情報を晒す気は無いし、晒す事でデメリットしかない為、曖昧に答えた。

それに彼が本当に探偵だというのなら、私の事なんて直ぐにでも分かるだろう。

彼が求める情報は、私が答えるまでもなく彼自身が見つけてしまう事くらい容易に想像がつく。

あの様子ではまだ"あの人"について知らないだろうけれど、それも時間の問題だ。

安室さんが私に接触した理由としては、様々な立場で顔が聞くという利点の向上。

私に見出した観察眼とやらがそこまで役に立つとは思えなかった。

ノンバーバルコミュニケーションが優れてるなんて事は、普通より個人の洞察力に長けていると言うだけの事。

ましてや私は彼に協力する所か、彼と対立するやもしれない立場なのだ。

私の立場なんて、何時でも何処でもころころ変わるし、あの人が決めてしまえば私はそこから動く事は出来ない。

あの人の立場と似通うのも当然の事で、それを考えると、矢張り一般人と並んで歩む事は難しい。

普通を装う事しか出来ない人形。

何時日常が侵されるかも分からない町で、何処で違えるかも分からない道を進むしかない現実は、どれだけ悲しいのだろう。

自分を悲観している訳じゃない。

私は"心"が欲しい。

"自立"する事の出来る"自我"が欲しい。

普通というものについて考えると、矢張りこの町の異常性に笑うしかない。

そんなこの町に生まれ暮らす者達は、私も含め、皆普通じゃない。

だから何時死んでも後悔のないように、人形の内は心を殺して息をする。

ーーお母さん、愛してるよ。

私を産んでくれた事を、酷く恨み続けるね。