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何故か、安室さんは公園のベンチに座っていた。
その様子を暫く物陰で見ていると、彼は住宅街を散歩し始めた。
単に自分の足でふらふらとしたいのか、何を意図して歩いているのか分からず、取り敢えず彼の後を尾行した。
次第に住宅街の奥へ向かっている様子から、少し雲行きが怪しくなって来た。
おかしい。
彼は何処へ向かうのでもなく、唯住宅街の奥へ進んでいる。
真逆…と思い、私は慌てて元来た道を引き返した。
兎に角安室さんから対角にに離れる様に走った。
ーー"拙い、拙いっ…！早く逃げないと！！"
そう思って住宅街の路地から大通りへ出ようとした時、背後から腕を引かれ、進んだ分を引き戻された。
「…っ！！」
「捕まえましたよ小鼠さん。
いや、Aさん」
両腕を掴まれた私は、背後に立つ男へ顔を向けた。
「何時何処で気付いたんですか…
安室さん……」
「一昨日です」
そう言って作り笑顔を向ける安室さんからは、ポアロと何ら変わらない雰囲気を感じたけれど、
私の手首を掴むその手は、痛いくらいに握られていた。
「一昨日って……
なら何でもっと早くに捕まえなかったんですか…？」
「泳がせていた、と言う理由では駄目ですかね？」
「他に理由は…？」
「都合が付かなかっただけですよ」
冷や汗が背を伝う感覚がした。
切迫した状態で話し続けるのも辛かったので、私は溜息を吐いた。
「………分かりました。
大人しく着いて行くので、取り敢えず手を離して頂けませんか…？」
「ええ、勿論。
念の為、片手だけは離しませんけどね」
「…好きにして下さい」
自分の立場が明らかに低いこの状況で、私に残された選択は従う以外になかった。
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作者名：馬×3 | 作成日時：2020年4月25日 3時
