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「おや、可愛い猫ですね」
本当に可愛いと思っているのだろう、緩んだ顔は自然と出ているものだった。
然しこの状況に焦って居た為、私は慌てて安室さんの言葉に便乗した。
「そ、そうなんですよね!
本当に可愛くてつい………」
「Aさんは猫がお好きなんですね」
「あ、え…と、はい…
猫が…というか、犬と猫が好きで」
「僕も好きですよ。特に犬が好きでして」
「へ、へぇ……
あっ、私そろそろ帰りますね。
すみませんお疲れのところ……」
「いえ、お気になさらないで下さい。
それと良ければ家まで送りますよ」
「いえ…そんな態々……」
「遠慮しなくて良いですよ。
それにこの車、僕のですし」
安室さんはニコニコと笑っていた。
いつもの笑顔でいて、それ以上に圧が篭っている気がした。
「あはは……じゃ、じゃあ…お願いします………」
どうやら私は、押しに弱いようだった。
「それで、何故店の裏手に居たんですか?」
「…実は、さっきの猫ちゃ……猫がポアロを出た時にいまして、
追い掛けたら、あそこにいました」
嘘である。
多分私は彼に怪しまれている。
今日はポアロで安室さんを盗み見ていた所為か、 不自然なくらい彼と目が合わなかった。
それはきっと、彼が私を不審に思い、意図して視線を合わせなかったのだろうと今更ながらに想像出来た。
「そうだったんですね。
でも気を付けてくださいね、最近女性を狙った不審者がいるそうなので」
「は…はい、ご忠告有難う御座います」
家まで送って貰うと、私はお礼を述べ、逃げるようにその場を後にした。
これ以上彼といて怪しまれるのは、大変辛かったからだ。
去り際も安室さんの視線が痛かった。
「……さて、帰ったらドライブレコーダーを確認するか」
安室は鋭い視線でAを見詰めていた。
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作者名:馬×3 | 作成日時:2020年4月25日 3時