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学校帰り、気まぐれに立ち入った喫茶店"ポアロ"。
チラホラと同校の制服も見かけるこの店は穏やかだけれど騒がしくて、
そしてコーヒーと食事が美味しかった。
然し私は、そんなお気に入りの喫茶店で唯一苦手としている"人"がいた。
少し前にポアロで働き出した"安室"さんという男性店員だった。
最初こそ爽やかな笑顔で、外見から少しチャラついたお兄さんと言う印象を受けた。
接客における細やかな気遣いや作業の正確さ、機敏さが見て取れて、店員の鏡だな、なんて思った位だ。
然し如何だろう。
いざその笑顔を自分に向けられた時、営業スマイルとは感じられない作り物のような"笑顔"に思えてしまった。
私の感じ方の問題なのか、その時は分からなかったけれど、度々その笑顔が自分に向けられた時は矢張り作り笑顔と感じてしまう。
正面切って"苦手だ"なんて、ましてや"嫌い"だなんて言える訳がないので、私は同じ様に作り笑いを浮かべて安室さんに言葉を返す。
「お待たせしました水野さん、
コーヒーと牛乳です」
「態々有難う御座います、安室さん」
果たして彼は、私の作り笑いに気付いているのだろうか…?
いや、気付かない方が良い。
客は客。店員は店員。
気安い関係になどならない方が楽だから。
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作者名:馬×3 | 作成日時:2020年4月25日 3時