疑問 ページ47
「ーーーAちゃん。」
たった一言、名前を呼ばれる。
起き抜けに寝惚ける事もなく、私はすんなり瞼を持ち上げた。
「…太宰さん。」
「お早うAちゃん。
君は相変わらず、呼ばれると即座に反応するね。」
「自衛隊の起床喇叭と同じですよ。教育の賜物と云うか、
…変わらないものですね。」
「寝付きの悪さもね。」
「……あの、今何時ですか?」
「んーとね、10時半。」
そう云われた瞬間、私は勢いよく上体を起こした。
即座に寝台から降りたは良いが、急に義足に刺激を与えた為体がガクッと傾いた。
「おっと、危ない。」
咄嗟に太宰さんが腰を支えてくれたお陰で、何とか転倒せずに済んだ。
「有難う、御座います。」
「そんなに慌てなくても大丈夫だよ。
多分国木田君も怒らないだろうしね。」
「あの、私の杖とベストは…。」
「其れなら机の方に有るから、私が取るよ。」
「御手間お掛けします。」
お礼を述べて上着を受け取るも、太宰さんは其の場から微動だにせず何かを黙考しているようだった。
「如何かされましたか?」
「いやなに、上着を着る動作だけで中々唆るものが…」
「巫山戯た事を抜かしていると引っぱたきますよ。
貴方はいい加減机の書類を片付けたら如何なんですか?
私も手伝いますから、先に机の整理整頓だけして来て下さい。」
「はぁい。」
義手義足の動作確認をした後社内フロアへ戻ると、何人か調査員の方が居なかった。
そう云えば、今日は鏡花さんの初任務だったか。
此方に気付いた与謝野女医と目が合った。
「A、もう起きて大丈夫なのかい?」
「はい、お陰様で。寝台有難う御座いました。」
「全く不健康ったらありゃしないよ。
其れにしても、太宰は余っ程アンタの事が心配だったみたいだね。」
「え…?」
「出社して早々、Aが医務室で寝てるって知ってからずっと傍についてたんだ。
心配なのも分かるけど、ありゃ過保護の域だね。」
太宰さんが席を立っている内に机上の書類を確認し、必要な資料ファイルを持って来た。
太宰さんが過保護。そんな事を云われてもいまいちピンと来ないけれど、思い当たる節がない訳でも無い。
悶々と考え込んでいると、国木田さんの机に目がいった。
「…珍しいですね、国木田さんがPCを開いたまま出掛けるなんて。」
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馬×3(プロフ) - 光華さん» 有難う御座います。頑張ります。 (2020年11月7日 22時) (レス) id: dfb05b741d (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 最高すぎる!更新頑張って下さい! (2020年11月7日 21時) (レス) id: e4678e2dff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:馬×3 | 作成日時:2020年11月5日 20時