習性 ページ45
応接用の机に書類を置き、鏡花さんの横に並んだ。
俯いた彼女の顔が上げられると、血の気の引いた肌が見えた。
何処か縋るような視線が注がれ、私はそっと彼女の手に触れた。
手袋越しに冷たく微細な震えを感じ取る事が出来、"彼の人"には呆れるばかりである。
「…鏡花さん、彼の人に会って仕舞ったんですね。」
「…何も、出来なかった。
敵だと分かっていても、動くどころか恐怖するしか出来なかった…。」
「大丈夫、大丈夫ですよ。
貴女の其の感覚は正しい。彼の人は恐れるべき対象なのだから。
彼の人を畏怖しない人なんて太宰さんや社長位なものです。
全く、彼の人も意地の悪い事を…。(ロリコンの癖に。)」
ロリコン基ポートマフィアの現首領「森鴎外」は、組織の長の鑑のような男である。
組織を統治し、組織内の誰からも畏怖・崇拝され、誰よりも組織の奴'隷として献身している。
凡そ似つかわしくない嗜癖を持ち乍ら、其の思考は首領としての冷酷さと聡明さを兼ね備えている。
恩のある者も多ければ、恨む者は其の数倍は居るであろう男は、今頃後の準備をしてエリスさんに傾倒している事だろう。
「彼の人が直接手出しをする事はないかと思いますが、今後向こうから何かしらの接触は有ると思うので注意しておいて下さい。
其の際は、敦さんや私達を少しだけでも良いので信用して欲しいです。
屹度貴女の力になります。」
「…うん、分かった。」
「有難う御座います。
まだ鏡花さんと話していたいんですが、やらなければいけない事が有るので其方を先に終わらせてきます。
何か不安事や相談事がある時は何時でも話し掛けて構いませんし、私から話し掛けに行く事も多いと思うので宜しくお願いします。」
「…有難う、御座います。」
去り際に彼女の頭をひと撫でし、書類の束を持ち直した。
資料室の棚から書類に関連するファイルを探して綴じ込んでいった。
暫く話して仕舞っていたのか、自身の机に戻るとふたたび書類の山が出来ていた。
「ご、ごめんなさい水野さん…。」
「いえ、お気になさらないで下さい。事務員の皆さんは今日中に移動をしないといけないので、此の程度の山何でもないですよ。」
話し込んだ分、私は巻き返すように再び書類を手に取った。
依頼内容と報告書を照らし合わせ、PCに追加情報を打ち込んでいく。
書類の確認作業は日没迄続いた。
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馬×3(プロフ) - 光華さん» 有難う御座います。頑張ります。 (2020年11月7日 22時) (レス) id: dfb05b741d (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 最高すぎる!更新頑張って下さい! (2020年11月7日 21時) (レス) id: e4678e2dff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:馬×3 | 作成日時:2020年11月5日 20時