【太宰治】一腕一足の少女 (ページ30)

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アンダーグラウンドⅡ ページ30

「ご心配痛み入ります。

国木田さん、太宰さんの事なのですが……」

〈あぁ、行方不明の件か。何かあったのか？〉

「太宰さんの事なので大丈夫だとは思うのですが、厄介事に巻き込まれたみたいです。」

〈……云うだけ云ってみろ。〉

「太宰さんの痕跡を追っていたら、どうやら拐かされたようでして。

犯人と思しき人物が赤い着物の少女で、異能力者でした。

痕跡を辿ると路地裏の何と知れない扉に繋がっておりまして。

透視した所、地下通路に続いておりました。」

〈その着物の少女とやらは、今事務所の医務室にいる。

経緯を話すから一度戻って来い。

太宰は自分で何とかするだろう。

それと地下通路に関しては……お前は何も見ていない。良いな？〉

「判りました。私は何も見ていません。

三十分で戻ります。」

国木田さんとの通話を切り、通りへ踵を返した。

地下通路の存在に後ろ髪を引かれつつ、先程見てしまった地下通路の続く先を見やった。

あの超高層ビルは確か……『mori corporation』だったか。

一瞬厭な顔が浮かんだが、頭を振って思考を振り払った。

先程国木田さんが述べた着物の少女についても気になったので、少し早足に探偵社へ戻った。