#124 ページ24
･
職員室に入室し体育館の鍵を借りようとしたところ
いつも決まって体育館の鍵がかけられている場所には既にダブルクリップに挟まれた生徒手帳がぶら下がっていた
生徒手帳は学年関係なく色が統一されているためひと目見ただけではどの学年の誰が借りたかは
裏の生徒証明部分を見るまでは判断できなくなっている
入部して朝練をするようになってからいつもと言っていいほどAが借り続けていたのに今日はどうやら違うようだ
｢ない｣
｢体育館の鍵？もう誰か持って行ったよ、そこに生徒手帳がかけられてるでしょ？｣
｢え、こんなに早くから？｣
今までになかった珍しい光景を前に呆然とするAを見て声をかけてくれた用務員さん
用務員さんの話によると背が高くて早朝だというのに大きくはっきりと挨拶するお辞儀の綺麗な男子生徒が
誰よりも早く学校に来て律儀に体育館の鍵を借りて行ったとのこと
｢なかなかの好青年だったよ、愛想のいい子で｣
｢愛想のいい好青年……｣
｢裏返しにしたらわかると思うよ｣
｢まさかそんな｣
ハッキリそうだと断言はできないが
用務員さんが言う"好青年"に思い当たる節がある
早朝の体育館、挨拶ができる背の高い男子生徒
まさかと思ったAはドキドキと心臓を大きく鳴らしながら思い切って生徒手帳の裏を見た
｢わ、｣
湘北高校生徒手帳と印字された生徒手帳を裏返すと
目に飛び込んできたのは見覚えしかないサラサラ黒髪ロン毛男の証明写真
証明写真といえば一般的には微笑んだり真顔で撮られるものだが
この生徒手帳の持ち主はまるで喧嘩を売るかのように鋭い目つきでカメラを睨んだ人相の悪い写真が使われていた
｢これ絶対三井先輩だ｣
写真から目を離し、生徒氏名欄を見ると
案の定そこには"三井寿"と綺麗に書かれていた
驚くほど綺麗に、ハッキリと書かれた氏名
この手帳を作った時は間違いなく不良だったはずなのにこういう所で真面目な本来の性格が滲み出てしまっている
というよりもこんなに字が綺麗なことに驚きが隠せない
意外な一面を勝手に覗いてしまったような気がして妙な恥ずかしさが込み上げてしまう
｢バスケ部の先輩でした｣
｢やっぱりバスケ部か…安西さんの教育がしっかり行き届きてる証拠だね｣
｢じゃあ私はこれで失礼します｣
｢君も頑張ってね｣
｢ありがとうございます｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 120人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こちめる(プロフ) - なつめさん» はじめましてコメントありがとうございます〜〜😊楽しいと言っていただけて本当に嬉しいです！！とっても励みになります🥲 (2023年2月26日 19時) (
レス) id: b38c8404b7 (このIDを非表示/違反報告)
なつめ - はじめまして！このお話が毎日の楽しみになってます☺️2人の距離感が絶妙で、読んでいてとても楽しいです！無理のない範囲で更新頑張ってください🫶応援してます！ (2023年2月26日 15時) (レス) id: 06b754cdeb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こちめる
| 作成日時：2023年2月22日 23時
