#115 ページ15
･
｢言ってください、じゃないと気になって眠れません｣
｢聞かなくても人生生きていけるくらいにはくだらねぇ質問だからなかったことにしようぜ、もういっそことな｣
｢ダメです｣
｢オレも嫌だわ｣
｢じゃあジャンケンで負けたら教えてください｣
｢いいぜ、絶対オレが勝ってやるよ｣
最初はあんなにぎこちなかったのに
今じゃこんなにもスラスラと言葉が出てくる
むしろこのまま時間が止まればいいのにとすら思う
｢負けてるじゃないですか｣
｢うっ……たまたまだ、たまたま｣
｢教えてください、お願いします先輩｣
｢なぁほんとに言わなきゃダメなのかよ｣
｢約束ですもん｣
キラキラと輝く曇りのない目が三井の心にグサグサ刺さる
どうせなら質問を変えてやろうかと思ったが
既にネタが尽きていて代わりになるようなものはない
Aの純粋で綺麗で大きな目から注がれる視線に完敗した三井は思い切りAから目を逸らし
制服のズボンのポケットに雑に手を突っ込んだ
｢好きな……タイプ｣
｢え｣
｢えって、お前が聞けって言うから！！｣
高校3年生にもなって
なんでこんな教育実習に来た大学生に中学生の男子が聞くようなお決まりの質問をしてしまうのだろう
それもよりにもよって相手は女子の後輩
自分の質問のネタの少なさに何故か深く傷ついてしまった
こんなの絶対聞くんじゃなかった
｢……………子供みたいに笑う人？｣
｢わかるようでわかんない答えだなそれ｣
｢よく分かんないんですよ、好きとかそうじゃないとか｣
絶対に他に聞くことあっただろうにと
急に小っ恥ずかしい気持ちに苛まされた三井は
Aの目線から逃げるように目を逸らした
しかも返ってきたのはわかるようでわからない独特な答え
｢先輩の好みは？｣
｢そんなの考えたこともなかった｣
逆に好みを聞かれてもそれといった答えは出ない
気づけばまた信号機が点滅した横断歩道の目の前で
｢あれだよ、好きになったやつが好みってやつ｣
いつになったら変わるのかわからない信号機
人の感情もまた同じように
いつ目まぐるしく変わるものかわからない
｢その答えは卑怯ですよ｣
チカチカと光って変わるように
気持ちもまた変わっていくのかもしれない
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 120人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こちめる(プロフ) - なつめさん» はじめましてコメントありがとうございます〜〜😊楽しいと言っていただけて本当に嬉しいです！！とっても励みになります🥲 (2023年2月26日 19時) (
レス) id: b38c8404b7 (このIDを非表示/違反報告)
なつめ - はじめまして！このお話が毎日の楽しみになってます☺️2人の距離感が絶妙で、読んでいてとても楽しいです！無理のない範囲で更新頑張ってください🫶応援してます！ (2023年2月26日 15時) (レス) id: 06b754cdeb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こちめる
| 作成日時：2023年2月22日 23時
