春風3＊Re:vale 百 (ページ3)

今日:14 hit、昨日:25 hit、合計:10,556 hit

＊43 ページ3

Side you

全く腹を括れていなかった。

Re:valeの収録当日。

彼らの楽屋前を通った時、

変な冷や汗がでて、IDOLiSH7以上に落ち着きが無かったと思う。

会ってしまうかも、と思うと

高校時代の色々な記憶がフラッシュバックして

最後はやっぱり申し訳ない気持ちになってしまう。

とてもじゃないけど笑って挨拶はできない。

もしかしたら、相手は私の事なんて忘れてるかもしれない。

だって、何も言わずに消えた女だよ。

覚えていても、しょうがない。

そんなネガティブな思考が止まらなくて、

それが顔に出ていたのかメンバーも心配してくれちゃう始末。

不甲斐ない。

Re:valeに挨拶しに行くと

紡さんとメンバーは楽屋を出て行った。

残された私は力が入らなくなり、その場にしゃがみ込む。

「意気地なし……。」

自分自身に向けた言葉は、1人楽屋の中に響いただけ。

暫くして、メンバー達が帰ってきた。

「みんなおかえりなさい！」

「Aさん！見てみて！百さんがジュースくれました！」

帰ってきた陸くんが、嬉しそうに手元の飲み物を見せてくれる。

「そう、なんだ。何のジュース？」

「ももりんがももりんくれた。」

横からひょこっと環くんが答える。

「ももりん…。」

「桃とりんごのスパークリングだって。いつも飲んでるらしいよ。」

それを聞いて、胸がギュッと痛くなった。

「そっかあ、良かったね…」

「Aさん、元気ないっすね？体調悪いですか？」

三月くんが心配してくれる。

さすが。人の変化によく気づいてくれる。

心配してくれたナギくんも、ももりんを譲ってくれた。

大丈夫、と返して、そろそろ出番のため、皆のマイクをセットしていく。

準備が出来たメンバーを楽屋から見送る。

やっぱり弱虫な私は、一歩が踏み出せなくて

この狭い楽屋に閉じこもった。

楽屋に着いてるテレビからスタジオの様子を見る。

調子の悪い陸くんを気遣ってくれる。

スタッフを宥めて空気を良くしてくれる。

三月くんやみんなにアドバイスをしてくれる。

ちょっと昔より他所行きなテンションな気がするけど

根本は変わってないんだね。

周りをよく見てて、明るくしてくれて

高校の時もよく彼に人が集まってきてた。

ごめんね。

黙って居なくなってごめんね。

IDOLiSH7が心許しててホッとしてる気持ちと

昔のグチャグチャな感情と

入り混じってて。

どうしようもない気持ちになった。