もっとスキを与えてほしい【角名】

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角名 side


あの後、Aは教室には行かずに

ずっと保健室にいた。


朝から刺激が強すぎて 俺も目眩がしてたけど

保健室にいくのは なんとなく気まずかったから

1日 教室の中で 過ごしてた。



「なぁ、角名、ちょっとええ？」


治に声をかけられたのは 昼休みのこと。


「村崎さんのことで、話しあんねんけど」

「あぁ…うん」


人気のない場所に2人、並んで腰を下ろす。


「単刀直入に聞いてええ？」

「うん」

「村崎さんとシたん？」

「…単刀直入すぎでしょ、してないよ」

「……ん〜？？？」


治が頭を抱えてうなりはじめる。

何を期待してたんだ。


「あ、じゃあキスとか、ハグは？」

「じゃあって…した」

「…ほんほん」

「なに、なんなの」

「いや…なんか、俺には…そうは、見えへんかった」

「…はぁ？」

「今まで黙っとったんやけど、俺 村崎さんのこと好きやってん」

初耳だった。

「あ、いや好きって 角名みたいな好きやなくて
ええ子やな〜って意味で。知っとった？
村崎さん、めっちゃ食事作法綺麗なんやで」



今日の朝みただけでも、それは よくわかった。

本人も 父親との喧嘩でそう言ってたし。



「修学旅行の時、それで興味持って
そっからも たまに目で追いよってん。けど…」

「けど…？」

「あの子は多分、ツムのこと」


そこで 1度言葉をやめ、ブンブンと子犬みたいに首を降って

立ち上がる治。


「あかん、やっぱなんもない」

「は、言いなよ続き。めっちゃ気になるんだけど」

「本人に言ってもらわな意味ないやろ。
俺のはあくまで、そう見える、ってだけやし」


…まぁ、確かにそうだ。

憶測でもの話すのは宜しくない。




「けど、これだけは言えるわ」

「何」

「俺、ちゃんとお前らのこと受け止める」


いつも眠たそうな治の目が、怖いくらいに決意に満ちあふれてる。



「せやから、角名も。
ちゃんと 村崎さんのこと受け止めて、守ったるんやで」


「…。うん、わかった」









*






「…なにしてんの」



放課後、俺らは再会した。




「…げっ、すなりんたろう…って、懐かしいね笑」





あの日のように屋上の



フェンス越しで。

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