Aimer Ⅴ (ページ9)

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「りょう？」

『東海オンエアの』

今東海オンエアのやつと一緒におるのか……
しかもりょうはAがめっちゃ好きな身長高いのやった。

「初めまして、じゃねえわ。お久しぶりです、東海オンエアのりょうです」

「え？どこかで会いましたっけ？」

「豊橋駅でタクシー探してる時に話しかけてきた作業員いたでしょ？あれ僕なんです」

「ああ！」

あの日声をかけてきた不審者みたいな男はりょうくんやったのか。そりゃAの家も知っている。

「実は僕平日はサラリーマンやってて、休みの日に東海オンエアとして活動してるんですよ」

「そうなんや！」

単純にすごい。年下やのにめちゃめちゃしっかりしとるやん。

”私なんだかんだで周りに恵まれてると思うねんな、愛知でも和歌山でも”

”和歌山が安心なら、愛知は刺激をくれる人達に出会えたと思う”

初めて2人でバーに行った日、澄んだ瞳がピニャコラーダを捉えていた。

真意を知りたくて、行方不明になりかけていた俺が知っているAを見つけたくて拐ったけど、あれがなかったら俺らはこうはなれなかった。

「あ、あの、Aに話したいことあるんやけど……」

「話したいことですか？」

「Aが俺のことで不安になってるって聞いて……」

本題を切り出せば、ああ、とあかりさんと同じようにりょうくんも苦笑いをしているようだ。

「A、西川選手だよ」

『や、やだ……。心の整理できてへん……』

焦った聞き馴染みのいい声。やんわりと拒否されてちょっと凹む。

「じゃあ俺が……」

「なんで俊光が出るんだよ」

トシミツって男もおるんか。2人っきりやなかったのは安心した。Aを狙っとるやつがAと2人きりやったら海を泳いででも東京に行きたくなるし。

「俺も話してみてえもん！西川遥輝だら！？スターやん！！」

「はいはい、西川選手はAに用があるんだからとしくんは静かにね？」

なんでだよ、とでっかい声がスピーカーに轟いた。としくんとやらは野球ファンなんかな。ギャンギャン騒ぐ犬を宥める飼い主のような穏やかな言葉の裏で、ふふ、と小さな笑い声が聞こえる。

「なあ、A。しっかり聞いとけアホ！」

『誰がアホやねん！』

ほんま、ここまで夢中にさせやがって。遠距離つらいから別れようなんて、絶対許さへんから。