Aimer Ⅴ (ページ8)

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Aと一緒にハワイのビーチを歩く夢を見ていた。2人で手を繋ぐ。歩幅を合わせてザク、ザクと砂を踏み鳴らす。

”楽しいなあ！”

”ほんまやな！”

幸せな夢を引き裂いて現実が飲み込んだ。電話が鳴り、不本意に起こされてしまった。

「……誰」

「おおっ、怖ぁ」

「あかりさんか……」

機嫌のいい声は酒を飲んだ後の特有の甘ったるさに包まれていた。

「ちょっと話あんねんけどいい？」

「手短にな……？」

時差がすごいっちゅうに……
日本はまだそんなに夜が深まっとらんかもしれへんけど、こっちは真夜中やぞ……

すぐにでも寝たい。ボーッとしながら頭に響く甲高い女声を聞いていた。

「あんたの彼女の話やで」

「A？」

「早っ。さっきAと会っててんけどさ、」

あの子変な心配しとるよ、とあかりさんは苦笑いした。

「心配？」

「遠距離を乗り越えられるか、心配やねんて」

あかりさんはAが語ったであろう本音を吐露した。

どこまでが本当かは分からへん。でも根が真面目なAらしい、真面目な悩みやな、と寝ぼける頭で考える。

「でな、Aには自分の口で言えって言うたけど、無理って言うからさ、今日もお節介よ」

「はあ……」

「まあ私が悪いねんけどね、彼氏と別れたー言うたから」

「え？別れた？」

遠距離のあいつと別れてもうたのか……
2人が仲睦まじくデートする姿を何回か目撃していた身としては衝撃で、真夜中に目が覚めてしまった。

「西川くんしかおらんのよ、不安を取り除けるのは」

「……あかりさんのせいやぞ」

「ごめんて！」

でもAが隠している本音を引き出せるのはあかりさんしかいない。成人してからは俺らが完全に離別しないように繋ぎ止めてくれた。

付き合ってもなお、俺らの真ん中でパイプ役を引き受けてくれる。Aも同性だからこそ言えることが沢山あると思う。

「でもありがとうな」

「え、西川くんが、ありがとう……？」

「俺もありがとうぐらい言うわ！」

物珍しげに言いやがって。でもAがプロ野球選手としての俺をしっかり見てくれている証拠でもある。

ちょっと前まではプロ野球選手が阻害分子になっていたのに。自分の全てと向き合ってくれるなら、俺もAの全てと向き合わなあかん。

起きとることを願い、LINE電話を繋いだ。