Aimer Ⅴ (ページ30)

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Aにとっての1番でありたいからこそ、自信がない。

「そこにおるんやから本人に聞け、バカ西川」

「関西人にバカはあかん」

「知らんがな」

それができたらどれだけ楽になれるのだろう。でもあかりさんはAが淹れたカフェラテを飲みながら、寒空の下遠くを見つめている。

……聞くしかないのか。男としての心の強さをみせなあかんのかな。

「……なあ、A」

夕飯の支度に明け暮れるAの背中を包む。ピクリ、と震える小さな後ろ姿が儚くも凛々しい。

「俺はAの癒しになれてる？」

『癒しか……、ノーコメント』

芳しくない反応に凹む。

『でも支えになってるよ？遥輝がおるから頑張れてるよ』

振り返った笑顔はやっぱりあどけなく、愛らしい。

『主導権はどっちが握ってもええし女々しくてもええよ？でも自信は持っててよ。堂々としとる遥輝が1番……好きだよ』

背伸びをしてギューッと頬を摘む。頬を赤らめてしどろもどろに囁いた愛がじんわりと胸の内を温めた。

「……いひゃい」

『わんこ』

「だれがいにゅや」

見た目は小さいけど中身は頼もしい。あかりさんの言う通り、Aからの言葉が1番の安心材料になった。

……あかりさんが空を眺める今なら。細い腕をはぎ取る。今度は俺がもちもちのほっぺたを摘む。

『んっ』

「はあ！？」

Aのおでこにキスを落とした。……と、同時に盛大な驚愕がリビングを包んだ。

「何！？見せつけ！？はあ！？誰の許可取ってチューしとんねん！？」

「許可とか要らへんしー、俺ら付き合ってるもーん」

「うぜえ……、さっきまでの西川どこ行った！？」

『また喧嘩始める……』

大人っぽいのにチューに慣れてへん所もやっぱり好きだ。弾丸のように素早く鋭くキッチンに乱入してきたあかりさんにより、俺とAは引き離されてしまった。でも心は軽かった。

「Aにチューなんて1億年早いわ」

「もうとっくの昔にいやらしいこともしてるしー」

「ああ！？」

『ちょっ……』

もう嫌だこの2人……、とAは頭を抱える。このド変態、とあかりさんにリビングまで出された俺は、元空手部の本気を尻に受けた。

「ケツもげる……！！」

「もう1発受けたい？」

「嫌や！」

『……うるさいなあ』

これもまた鮮やかな思い出の一部になる。