Aimer Ⅴ (ページ23)

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夢ページ23

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私のいい所は何か。本人を目の前にパパも遥輝も恥ずかしげもなく語り始める。

「Aってシャイやけど甘えんぼなとこあるやないですか？でもシャイやから言葉にはできひんくて、代わりに手握ってくるんですよ！」

「変わってへんなあ、今でもそんな感じなんやな！」

「そうっすよ！」

恥ずかしすぎる。居心地が悪くなった私はママに目配せしてそーっとリビングから抜け出す。そのまま財布と鍵とiPhoneを持って駐車場に逃げた。

どうせあの人達は話に夢中だから私が1人いなくなった所で気づかないだろう。

『よっしゃ』

1人で行くのは侘しいけど行こう。お散歩がてら徒歩圏内の農園へ足を進める。

私の地元は和歌山の中でもいちごの生産が盛んで、冬になるといちご狩りを楽しむ家族連れやカップルで賑わう。遥輝とも年明けに行こうね、と話していたのだけど早く行きたかった。

『こんにちは！』

「こんにちはー。本日1名様ですか？」

『はい！ 1人で黙々食べます』

あはは、と笑った受付のお姉さんがカゴを渡す。30分もあれば1人で充分な数を食べられるし、摘めるだろう。

平日やけど冬休みやから家族連れがちらほら見受けられる。皆幸せそうだなあ、と見ている方も幸せな気持ちだ。

「お姉さん1人ですか？」

いっぱい摘んで実家でジャム作ろうかなあ、ケーキ作ろうかなあ、と大きいもの小さいものを収穫していると、高校生くらいの男の子に話しかけられる。

『せやで？実家近いし暇やったから行ってみよう思うてね。君も1人なん？』

「俺は彼女と！」

ミオー、と女の子の名前が叫ばれる。パッと振り返った彼女は私を見るなり目を丸くした。

「へっ？東海オンエアのAちゃんがなんで……？」

「え？東海オンエア！？」

バレたか。高校生ならYouTube見てるもんな。頭の中は冷静に考えを巡らせる。

「こんな田舎になんでAちゃんがいるんですか！？」

『私の地元やねん』

「マジか、関西って和歌山やったんや……」

ミオちゃんは少し涙ぐみながら、男の子の腕を掴んだ。

「私、Aちゃんの動画見てドラム始めたんですよ。文化祭の時にドラムかっこよかったって言ってもらえたのはAちゃんのおかげです」

『こちらこそ嬉しい報告ありがとう！』

ミオちゃんの頭を撫でると、1粒の滴が地面に吸い込まれた。