Aimer Ⅱ (ページ9)

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「はあ？お前この声で気づいてへんの？お前がよーく知っとるやつやん！」

そいつはあっけらかんとしていた。

「A、1週間ぶりやな」

『……は？』

勢いで振り向く。自分の目線の先には胸板、見上げればめちゃくちゃに知っている顔があった。

イケメンと呼ばれる所以が分からないほどに見慣れたあの顔、今の私の最大の悩みの種になっているあいつだった。

「よっ」

ニコニコと悪気のない笑顔。下の前歯がガタついてる……、なんてどうでもいい事は置いておこう。

『何しとんねん。てか何で私の住所知ってんの！？』

「Aが電話出てくれへんからおばさんに住所聞いてタクシーでここまで来たんやで！」

せっかく愛知来たから迎え来てほしかったのに、と遥輝は唇を尖らせた。

マジかよ、我が母……
いくら幼馴染でも勝手に住所教えるの止めてくれ……

今回遥輝だったからいいけどもし見知らぬ男やったら、考えるだけでゾッとする。私生きて帰れていたかな。

「エントランスにおるのがAで良かったわあ」

『いや、全然良くねえよ』

こっちは心臓止まるかと思ったんだから！！
21時に後ろから肩を叩かれるやつの気持ちになってみろ！！

「ほらほら、はよロック解除して。こんなとこで止まっとったら怪しまれるで？」

調子のいいことばっかり言いやがって……
何をレディのお部屋に入る気満々でおるんや！
遥輝は急かすように607とボタンを押している。

部屋番号まで知っとんのかい。でも不審者じゃなくて良かった、と安心しつつロックを解除した。その手に握られた大きなスーツケースには触れないでおこう。

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「おー！綺麗にしてるやん！」

失礼な、誰目線で言うとんねん。でもまさか自分の城に遥輝を入れることになろうとは……
1週間前の自分に言うても信じないよ。

「ここやったら1週間泊まれるわ」

『はあ？泊まる気なん？』

「おう」

ホテル取ってへんし、とさも当然と言わんばかりに目を丸くされる。しかも1週間って長いやん……

『別にええけどさ……、連絡してや……』

「ごめんごめん」

絶対反省してない。ここでホテル取れ、と言わないから付け込まれるんやろうけど、まあ遥輝ならええかな……、と思ってしまっている。

「なあ、A」

『ん？』

「俺まだ飯食ってへんねん。腹減った」