Aimer Ⅱ (ページ33)

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『ねえ、ほんまに買うの？自分のやつは自分で出すよ？』

「何でデートで彼女に金出してもらうん？奢られとけ」

かっこつけたいやん。財布を出そうとするのを無理やり止める。

ベルーガの大きなぬいぐるみとボールチェーンキーホルダー、2頭のペンギンが抱き合っているぬいぐるみ。ハートに”N”の文字が入ったイルカのペアストラップ。

「いらっしゃいませー」

今までの俺やったら絶対に買わなかった。
レジまで持って行って手短に支払いを済ませれば、売りに出されていた商品が全て俺らのものになった。

「はい」

『ほんまに買っちゃった……』

「そら買うやろ。めっちゃ欲しそうにしとったやん？」

特にベルーガぬいぐるみへの食いつきといったら……
確かに可愛いんやけど、奴に嫉妬しそうなレベルでうっとり見つめていた。

お揃いのものも欲しかった。イルカなんて付けとったら確実に宮さんと大将、拳士さん……、いや、ほぼ全員の選手に弄られるやろうけど、それでも身につけたかった。

水族館を出る。空はあっという間に夕暮れに染まっていた。

『嬉しい。ベルーガ、抱き枕にしよう……』

「俺やと思って抱いとけ」

『なっ……！？』
駐車場まで歩く道のりでからかえば、顔を赤くする。

「さっきチューしたやろ。ハグでそんな反応しとったら、その先持たへんぞ？」

『その先とか言わんとって……』

今はまだしない。もしかしたらAの家におる間は手を出せへんかもしれん。俺はAの男性関係なんて知らない。知りたいような気もするし、知りたくないような気もする。

少し気まずい空気が漂う。

「おいおい。そんな湿っぽくなんなや」

『だってその先とか言うから……』

「えっちなことでも考えた？」

『バカっ！』

「痛っ！」

ちっちゃい身体のどこから力が湧き出たのだろう。軽くアザができそうな勢いのグーパンチが右腕目掛けて飛んできた。

当の本人はより一層紅潮していた。

「いずれはぶち当たる問題やけど、まあ、今はやらへんから安心して？」

『……ポンコツでごめん』

「Aがポンコツやったら俺はどうなんねん……」

そんな会話をしながら歩く。夕日に照らされた横顔は小さかったあの頃よりも大人になった。

でも長いまつ毛や二重まぶた、柔らかくも意思の強い目線は変わらなかった。