Aimer Ⅱ (ページ29)

今日:4 hit、昨日:3 hit、合計:174,354 hit

＊ページ29

.

『ありがとう！さっ、デートに戻ろう』

離れた手が再び繋がる。華奢な手はあっという間に冷えた。指と指を絡めればどうしたん、と関西弁が戻った。

「……A、人気やな」

『そうやろうか。でも東海オンエアはYouTuberだけやなくて観光伝道師っていう岡崎の観光大使もやってるし、顔は知られてるっぽい』

「あの子、俺よりAやったやん」

『目もくれへんかったね』

そっとして貰えるのは嬉しい。でも気づいてることが前提な訳で……

「ドラゴンズには勝たれへんかあ……」

『あの子宮城やからどっちかと言えば楽天やろ』

確かに。ド正論をカマされて何も言えなくなった。……リーグ一緒やん！！

.

『BMW……』

「X5な」

車を目の当たりにして怖気付いたA。さっきまでの勢いはどこ行ったん？そういえば前に俺の車を見た時もこんな反応やったな。

「はよ乗って出かけようや」

『うん』

そんで促せば遠慮がちに運転席の斜め後ろに座ろうとする。

「アホ、Aの定位置は助手席やろ！」

『ぎゃっ』

ほんまにこいつは……
欲がないというか、なんというか。腕を引いて助手席に座らせな、こいつはどこまでも俺から離れようとする。

寂しいやん、せっかく付き合ってんのに。

でも今までの女達はこっちが何も言わんでも、厚かましく助手席に座ってきたやつらばっかりやった。車1台にぎゃあぎゃあ騒がないのも好感が持てる。

Aの場合は騒ぐも何もビビってるだけやけどな。

同じ女でもこうも反応が変わるか。そこは面白かったりする。

『ああ、慣れへん……』

「大丈夫、あと2,3分もすれば慣れる」

『そうかなあ……』

「この前も慣れたやろ？」

『まあ……』

これから先、どんな車でも助手席はAの定位置にするつもり。男どもが絡むと話は別やけど、女の子はもうAだけで充分や。

「よっしゃ行こ！」

『……うん！』

明るい笑顔が戻ったのを確認し、エンジンをかける。

元々今日は一緒に出かける予定やった。それが俺が我慢できなくなって告白して、Aが同じ気持ちでおってくれて、カップルとして行けることになった。

Aと初めてのデート。今の俺はびっくりするほどにテンションが高い。

「水族館、楽しみやあ……」

車窓から見える空は昨日よりもずっと青く、綺麗に思えた。