Aimer Ⅱ (ページ27)

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太いヒールの青パンプスを履いて少し背伸びをしたA。昨日のワンピースを除いて基本的に私服はスキニーとスニーカーの組み合わせしか見てこなかったから、柄にもなくドキドキする。スカートなんて聞いてへんぞ……

足ほっそいし顔と手はちっちゃいし、ちゃんと食ってんのか？さっき朝飯食べた時もご飯の量が少なかった。

そういうことを考えないと煩悩に潰され、繋いだ手から伝わる体温に酔ってしまいそうやった。

『私のやなくていいの？』

「おう。さすがにデートでAに運転してもらう訳にはいかん」

自家用車は北海道に置いている。もちろん車がない俺は徒歩か公共交通機関を使いこなすしか移動手段がないんやけど、愛知で車がないのは不便やということでレンタカーすることになった。

『でもあれやろ？外車なんやろ？』

「そうやで。ポルシェかBMWかな」

『高級車……』

Aは恐れおののいたように顔をひきつらせ、

「でもお前もそれくらい乗れるんやろ？」

『乗れるけど……、私はココアでええかな……』

あはは、と苦笑いした。AはYouTubeでそれなりに稼げているようで既に結婚しなくても生きていけるだけの収入があるらしい。

「庶民的やなあ」

『私そんなに車にこだわらんもん。乗りやすさは大切にしたいけど』

ちょこまかしとる。あどけないし子供っぽいところも沢山ある。おまけに庶民的。そんなAが大金を稼いでいるイメージが湧かない。

「プレゼントしよか？」

『車を？』

「おう。俺来年から年俸上がるし、1台ぐらい余裕やねん」

『そんなんいいって……、申し訳ないし自分のために使ってよ』

「でもAのために使うのが俺のためになるんやで？」

レンタカー屋に向かう道中、付き合いたてとは思えへん会話で盛り上がる。

軽く押し問答しながら手を繋いで街を歩いていると、あの、と女性から声をかけられた。

「東海オンエアのAちゃんですか？」

『はい！そうですよ？』

手が離れる。温もりが消えて冷たい風が隙間に入り込む。

「本物だあ……！」

その人は知り合いではないらしい。何なら面識もなさそうやった。

「あ、あの！私宮城から有給取って岡崎き来たんです……！」

『観光？』

「はい！聖地巡礼です！
Aちゃん顔ちっちゃい……！可愛い……」