Aimer Ⅱ (ページ25)

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色々あって予定よりも準備の時間が遅くなりそうだ。8時45分。ようやく片付けを終え、歯磨きをして準備に取りかかる。

部屋まで歩くと、その後ろを遥輝が着いてくる。

『なんで着いてくんの？』

「部屋が見たいから」

『ダメです。今から私の部屋入って来たらマジで怒るからね？』

「えー、そんなん言われたら気になってまうやん。何すんの？」

『着替えとメイク』

それ以外に何があるというのか。

「メイクなんてせんでええねん。はよ行こうや」

『アホか。さすがにこれで外に出られないから』

隙をついて勢いよくドアを閉めて鍵をかける。

「あっ！」

遥輝はドアをドンドン叩いて、なあAー、開けろやー、と叫ぶ。

何で身支度するだけなのに治安が悪くなんのよ……

いい大人やん。親鳥に懐く雛鳥じゃあないんだから。しかも今から一緒に出かけるんやし。

……このチュールフレアのミニスカート、まだ卸してなかった。コーディネートを考えながら外が落ち着くのを待つ。ざっくり編みのグレーのタートルニットにネイビーのスカート。黒タイツを履いて首元にはネックレスを付ける。

しばらく経って静かになったから、ササッとカメラを準備して録画ボタンを押した。

『どうもおはようございます、Aです。
今日は不定期開催Aのメイクコーナーです！
今朝の9時になった所なんですけど、これからお出かけをします！』

ここはぼかしてね……
さすがにデートなんて言えないから。

『今日は急いでいるのでナレーションベースのメイク動画になります。
いつもとは違った雰囲気で動画をお楽しみください！
それでは、スタート！』

まずはコンタクトを装着する。今日は個人的に全然バレないで話題のブラウンカラコンを入れる。

髪の毛はヘアバンドで留めて、いつもメイクをするように鏡に向かって下地やファンデーションを塗っていく。少し違うのは使っているコスメをカメラの前で無言で紹介していることくらいだ。

学生の頃はお金がなくてコスメは限られたものしか使えなかった。アイシャドウとかマスカラとかリップとか、その程度しか使わなかった。

でも社会人になってそれなりに稼げる今は、ベースも揃えたしプチプラもデパコスも良いものは積極的に取り入れるようになった。

女の子って大変だ。でも女の子はとても楽しい。