Aimer Ⅱ (ページ21)

今日:17 hit、昨日:10 hit、合計:174,299 hit

＊ページ21

.

味噌汁の匂いにつられて起きる。そんなの小説とか漫画だけの世界やと思っていた。

夢と現実の狭間で味噌の匂いで目覚めると、キッチンではせっせとAが朝ご飯を作っていた。既にカウンターには小皿2つが用意されている。

……何やねんこの子。昨日も思ったけど料理までやってのけてしまうんか？

「めっちゃ料理作れるやん……」

『そりゃあ5年前から1人暮らしやもん。ある程度のことはできるようになったよ』

「すげえ。俺1人暮らしなって1年目やけど何にも作れへんよ？」

『普段どうやって生活してんの？』

「外食とコンビニとサロンのご飯」

『ちょっと特殊な男の1人暮らしって感じやね』

Aは苦笑いした。四角の皿には焼き加減ばっちりの鮭が乗せられる。汁椀の中には豆腐とわかめの味噌汁が入り、味噌の匂いにまたも鼻をくすぐられた。

『具はワカメと豆腐にしたけどいい？』

「おう」

『和食やからご飯にしたよ。もうすぐ炊けるから待ってて？』

「ありがとう。いっぱい盛ってほしい」

『了解。じゃあ今作ったやつ全部テーブルに並べといてくれへん？』

「うん」

なんか夫婦みたいやな。できた料理を並べながら思う。

今までの彼女にここまで料理作れて、俺の好みまで熟知する子はおらんかった。明らか惣菜やのに手作りと言い張って出されたことすらある。

でもAが作るのは本当に手作りだ。パンでもええけど、朝は米がいい。いや、米じゃないと嫌。ガッツリ食いたい。そこを覚えてくれてるのが嬉しい。
これが幼馴染の特権か？

ピーッ、ピーッ、と炊飯器からアラーム音が鳴る。

『炊けた！』

フタが開くと、

「めっさええ匂いする」

『お母さんが知り合いに新米貰ったらしくて、一昨日贈ってきてくれたんよ』

「おばちゃん最高」

お椀に盛られる米は白く、光り輝いている。濁りがない。1粒1粒がしっかり立っている。

『ちょっと待ってね、おかずはあとだし巻き玉子だけやから』

「まだ作ってくれるん？」

『いらんなら作らんけど』

「食べます」

『果物も切るから待ってて？』

確か南條家のだし巻きもめちゃくちゃ美味かった記憶がある。自分の母親のが1番美味いんやけど、2番目に美味いのはAの家のやったなあ。基本的に何でも美味しかったけど。

熱した卵焼き器にジュワー、っと卵が流し込まれた。