Aimer Ⅱ (ページ17)

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【番外編】人生を変えたページ17

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私はその日、亮くんの家にいた。

「うわあ、まじか……」

俊光が呟く。

「ここに来て満塁か……、どっちが日本一になってもいいけどやっぱりカープだら？」

ざわくんが鼻で笑った。

「あれだけドラゴンズを打ち負かしてきたんだからね、勝ってもらわないと困るんだよなあ」

ねっA、と少し酔っ払った亮くんは私の腰を抱いた。

ワンルームの部屋に4人の大人が座るとギュウギュウ詰めになる。ローテーブルにはおつまみやらビールやらチューハイやらお茶やらが並ぶ。野球好きの私達はテレビ画面に釘付けになった。

『分からんよ。もしかしたらもしかするかもよ……？』

「いや大丈夫、次の打席西川じゃん。満塁だけど今の所不調だし、多分ゴロかフライで延長戦に入るやろ」

前の打席で岡選手が中崎投手からデッドボールを受けて激高、両軍が睨み合ってあわや乱闘の一触即発状態になった。

「この空気に飲まれてメンタル弱そうじゃない？」

「髭生やしてイキってるけど打てなさそうだし」

「実際打ててねえし。延長戦決定だ」

物々しい雰囲気が画面越しでも伝わる。現場はもっと騒々しいのだろう。そんな中で打席に立つのは、もう何年も連絡を取っていない幼馴染だ。

プロ野球選手になって5年目。ペナントレース序盤は不調に喘いだものの交流戦後に打撃スタイルを一新し、長打から単打と出塁に徹した後半戦では好成績を残した。

そんな彼は今、またしても不調と戦っていた。

調子はどうであれ、1番打者が打率1割なんて論外だ。リードオフマンとしての仕事ができていない。現に遥輝は2番に下げられた。カープ応援のざわくんと亮くん、としくんにすらこれなら俺が、と舐められてしまっている。

『今だ西川
遥かに続いた道を
走れ西川
輝くその日まで
かっ飛ばせー、にっしかわっ……』

「あれ、Aって西川の応援歌も歌えるんだ」

『何か覚えちゃった……』

何度も札幌ドームやビジターで歌ったんだもん。覚えもする。

亮くんの声が聞こえなくなるくらい、ただ祈った。
遥輝、打ってよ。私、遥輝ならやってくれるって信じてるよ……
手が真っ赤になるくらい祈り、薄目で画面を見ながら応援歌を呟いていたその時だった。

『っ！いけっ……！』

打ったボールはライトスタンドへ向かって軌跡を描く。大きな当たりになった。