Aimer

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「続いてはこの方の登場です！」


『皆さんおはようございます！ 東海オンエアのAです』


数時間後。Aは無事に起きられてメイクもバッチリ決めて、カメラの前に立つ。

YouTubeの生配信とは違う、テレビの生放送の緊張感。嫌いではない。でも爽やかでありながら、どこか漂う張り詰めた空気に出演者ではない僕まで身が縮こまりそうになる。

平常心、と言い聞かせて笑顔を向ければ、カメラのない場所でAは親指と人差し指で小さな丸を作った。



『今回の”Aが行く！”は先月のプロ野球・日本シリーズを盛り上げた2人の野球選手を訪問してきました。2人とも笑顔が素敵な明るい選手でしたよ！ それでは、どうぞ！』


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『Aです。不定期開催、Aが行く！は北海道日本ハムファイターズのハルタクコンビを全力特集します！』


「ドデスカをご覧の皆さん、おはようございます。北海道日本ハムファイターズの西川遥輝です」


「中島卓也です」


スタジオに置かれたテレビで取材の様子を見せてもらう。……いやあ、2人ともかっこよすぎん？

日本シリーズを制覇し、特に西川選手なんて主役の1人として上げても遜色のない活躍をした。とても同い年とは思えない。


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コーナーが進み、劇的な結末を迎えた第5戦に話題が及ぶ。


『西川選手は第5戦でサヨナラ満塁ホームランを打った時、どのような気持ちでしたか？』


「そうですねえ、とにかく入ってくれ、思うてました。試合も均衡状態やったし、日本一のためにここで流れをこっちのもんにしたかったんで」


僕と俊光、亮くんが圧倒的な強さでセ・リーグを席巻したカープに賭けた中、Aは1人、ファイターズが日本一になるんだと信じて疑わなかった。

あの日西川選手が最終打席に立つとAは遥輝お願い、と縋るように祈り、ライトスタンドに入った時なんて大きく目を見開いたかと思うと、静かに涙を流していた。打たれた側の男どもの方が大騒ぎしていたように思う。



『あのホームランは1ファンとして感動しました。とてもかっこよかったです！』


「あ、ありがとうございます！」


画面の中の西川選手はとても嬉しそうに笑っていた。普段の西川選手がどんな人かなんて知らない。見た目はチャラく見える。

でもAを見る目が柔和で慈愛に満ちている気がした。

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