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去年のシーズンやって、Aがどこかで見てくれてるかもしれへんから、何かの手違いでファイターズの西川遥輝を見てくれてるかもしれへんからって気合い入れて頑張った。
そんで今日のこの飲み会も、ほんまはAと酒を飲みながら会えなかった5年間を語り尽くすつもりやったんやで?
Aは誕生日が遅いからジュースで乾杯になるけど……
「西川くん……、それは恋やないの?」
「俺が、Aに……?」
少し酔いが回った頃、あかりさんは言った。
「Aの存在が西川くんの原動力やったんやろ?」
「まあ……」
「恋やん。Aのことめっちゃ好きやん。私は小学の時からずっと片想いしてるなあ、思うてたけど」
「ないない。Aに見てほしい気持ちはあるけど、恋まではしてへん」
あの時は頑なに否定した。むしろ幼馴染にそういう気を起こしてはいけないとすら考えていた。
けど、今思えばあかりさんの言葉は正しかった。その後の俺とAの伝達役をしてくれただけある。所詮男と女。離れていた5年はAという存在を大きくした。俺の目に女の色を強くした。
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”まあ、そのうち分かるわ”
あの日の言葉は今になって痛いほど身に染みる。
日付が変わった頃、あかりさんに電話をかけてみる。あかりさんは和歌山に残り、看護師として働いている。
「……てめえ」
開口一番、低い声がスピーカーに乗せられた。
「物騒やなあ」
「そっちこそ何時やと思ってんねん。こっちは今から寝ようとしとったんや……」
「いやあ、ちょっと報告があってな」
「何。LINEじゃあかんの?」
「あかん。それで俺な、Aと仲直りできた」
「は? え? A?」
「おう」
「Aって、和歌山出身で今は愛知で東海オンエアとして頑張ってるあのA?」
「おう」
「あんたの幼馴染のAちゃん?」
「せやで」
仕事で一緒になったこと、Aのわだかまりを解いたこと。連絡先を交換してさっきまで電話していたこと。あかりさんにこの2日間の出来事を話した。
「マジかあ……。ほんまよかった。
じゃあこれから私は君達のお世話をしなくてもええってことなんやね」
「それはまだしてもらわな……」
「何で? 仲直りしたんやろ?」
「いや、な? 俺、Aが好きになってしもうたんよ……」
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あおやなぎ(プロフ) - はるちゅんさん» ありがとうございます(^^) これからじゃんじゃん進めていくので楽しみにしていてください〜! (2019年9月1日 23時) (レス) id: c05e59e944 (このIDを非表示/違反報告)
はるちゅん(プロフ) - うおっ、最強!更新頑張ってください!お気に入りに入れます! (2019年9月1日 22時) (レス) id: 3445983938 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおやなぎ | 作成日時:2019年8月29日 22時