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「まあ……、卓さんにその手の話がないんやったらやっぱり遥輝さんですね」
「はあ!? もう話したやろ……」
男達の恋バナは終わることを知らない。俺のターンが秒で終わったかと思ったら、また遥輝に戻ってきた。
慎吾はもうすぐ別のチームでプレイすることになる。こいつだけはその後の進展はなかなか聞けなくなるから、根掘り葉掘り遥輝の恋バナを引き出したいらしい。
「でもな、あいつはかごの中で養われとる鳥みたいやねん」
「鳥?」
手元に置かれた4つの缶。珍しくほろ酔いだ。
「おん。A、恋愛すんなって言われてんの」
「誰に?」
「……あいつの仕事仲間」
遥輝はスマホを操作し、YouTubeの動画を見せる。
そこに映し出されていたのは東海オンエアの控え室というチャンネルの動画やった。
しばらく見ていれば身長の高いハンサムとオレンジ髪のやつに、
”俺達がいるから恋愛なんてしなくていい”
”Aが彼氏を作ったら暴動が起こる”
”せめてメンバーを選んでほしい”
と懇願されている。
彼らの熱気はAちゃんを困らせ、遥輝を憤慨させるには充分で。
「何でAがここまで言われなあかんの?
Aにやって好きなやつができたら、そいつと付き合いたいって思うはずやん……。
俺はな! かごに囚われて出てこれへんなった羽が綺麗な鳥を救いたいんや!」
……おお、熱がこもってる。支離滅裂やけど。鳥じゃなくてAちゃんやけど。
ただの酔っ払いと化してしまった遥輝はポケットからタバコの箱を引き抜く。慣れたように1本を取り出して口付け、ライターで火を付けようとするが……
「……あかんわ」
何かを思い出したように元あった場所に戻した。
走攻守揃ったマルチプレイヤーで、球界きってのイケメンを落としたのは過保護に守られた可憐な幼馴染。たった1日……という訳ではないにしても、短期間で遥輝をこんな風にするんだからあの子は罪だ。
「A……、ちゅー……」
夢と現実がままならない遥輝は一聞、気持ち悪いことを寝言に落としてローテーブルに項垂れる。
「ちょっと、この酔っ払いどう処理するんすか?」
「放ったらかしちょっていいやろ。ここ遥輝の家やし」
「俺らは飲み直しましょう」
近ちゃんの冷静な判断により、眠りについた遥輝を置いて俺らはこの部屋から出た。
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あおやなぎ(プロフ) - はるちゅんさん» ありがとうございます(^^) これからじゃんじゃん進めていくので楽しみにしていてください〜! (2019年9月1日 23時) (レス) id: c05e59e944 (このIDを非表示/違反報告)
はるちゅん(プロフ) - うおっ、最強!更新頑張ってください!お気に入りに入れます! (2019年9月1日 22時) (レス) id: 3445983938 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおやなぎ | 作成日時:2019年8月29日 22時