* ページ18
·
「それじゃあ気を付けろよ? ちゃんと鍵閉めて襲われんようにな?」
『分かっとるよ! そっちこそ気を付けてね!』
またね、とビジネスホテルの中へ消えていく小さな背中を見送る。ここで引き止められへん俺はただのポンコツで。
「はあ……」
ため息が漏れた。
フロントの男が変な目で俺を見る。居心地の悪さは否めず、すぐさまその場から離れた。
Aの泊まるホテルと俺の家は意外に近く、歩いて行ける距離にある。
「ほんまおかしいわ俺……」
酔ってたから? それともヤニクラか?
キャバの姉ちゃんやチアガールよりも女が可愛く見えるなんていつぶりなんやろ……
オレンジのグラデーションカラーに染めたロングヘア。クルクル巻かれて人形みたいやった。メイクもしとったけど、素地を生かして大人らしさを際立たせていた。
画面越しのAはめちゃめちゃ可愛かった。でも生のAはもっと可愛かった。べっぴんさんで綺麗やった。
ヤニクラやない。酔ったからでもない。
「まじか……」
信じられへんし、まさかこの短時間でそういう風になるとは思わんかったけど……
俺はどうやら、Aを女として見てしまっているらしい。
綺麗なお姉さんやなかったん?
品のある女性やなかったん?
……ほんまに生意気なおてんば娘でええのか?
エントランスでロックを解除し、エレベーターに乗り込む。しばらくして指定の階に着く。鍵を開け、玄関のドアを開く。
「ただいま……」
誰もおらん部屋に気力の落ちた声が響く。無駄に広いのが虚無感を引き立てる。ここにただいま、の声があったらどんだけ明るくなるやろうか。
できたてのご飯に温かい風呂、そして大好きな彼女、もしくは愛する奥さんと可愛い子供がおったら……
「はあ……」
独身の寂しさに急に襲われて再びため息が零れた。
〜♪
LINE通話の着信音が鳴る。気だるくスマホを見ればちょうど頭の中を占拠していたあいつからで。
「もしもし?」
『もしもし、生きてる?』
「そんな簡単に死なへんわ」
『でもさっき死にそうな顔しとったで?』
大丈夫そうやね、と明るい声が響く。Aなりに心配してくれたんが嬉しくて、つい頬が緩む。乾きかけた心が再び潤っていく。
「寝れば大丈夫やで」
『そっか。……じゃあ、おやすみ』
「おやすみ」
259人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「プロ野球」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あおやなぎ(プロフ) - はるちゅんさん» ありがとうございます(^^) これからじゃんじゃん進めていくので楽しみにしていてください〜! (2019年9月1日 23時) (レス) id: c05e59e944 (このIDを非表示/違反報告)
はるちゅん(プロフ) - うおっ、最強!更新頑張ってください!お気に入りに入れます! (2019年9月1日 22時) (レス) id: 3445983938 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あおやなぎ | 作成日時:2019年8月29日 22時