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「ということでな、A、LINE交換しよ?」
『え?』
してやったりな遥輝はスマホを操作し、アプリを開いてともだち追加のQRコードを表示している。
「ほれ、読み取って。お前が追加したらそれで完了やろ?」
何これ。ペースに飲まれてるやん。
『……遥輝がジャンケンで勝ったらしてあげる』
「何でや! 卓さんとは自分から交換したやん!」
『卓さんはええ人やもん』
「俺もええ人やろ!」
ジャンケンに関しては何となく負けへん自信がある。これで勝ったら私達はまた、元の他人同士だ。
「絶対負けへん!」
『私やって負けへん!』
こうやって子供みたいな言い争いをするのは実は楽しい。そもそも卓さんかあかりに教えてもらったら繋がれるのにね。
他人に戻るなんて嘘。勝っても負けても教える気はあるということは遥輝には秘密にしておこう。
「よっしゃ! 行くで!」
『1回勝負な?』
「望むところや!」
最初はグー、ジャンケン……
「『ポンッ』」
一瞬の賭けに勝ったのは、
「何でや……」
『ジャンケンの神様が味方してくれた』
遥輝はパーを、私はチョキを出した。結果は遥輝にとっては残酷で、テーブルの上で落胆している。
「また音信不通になってまうやん……」
『そう簡単にはいかへんもんやで』
”素”の西川遥輝ねえ……
目の前におるのは確かにプロ野球選手の仮面を外した、24歳男性の西川遥輝。試合中の真剣で鋭い瞳には程遠い、ポンコツむき出しでアホな遥輝。かつて私がイタズラをした時に、簡単に引っかかったあの遥輝そのものやった。
そう簡単には人は変わらへん。心配を杞憂に変える姿につい頬が緩む。
『ずっと思ってたこと言っていい?』
「どうぞ……」
『卓さんかあかりに聞けばええやん』
その瞬間、鳩が豆鉄砲を食らったような表情をした遥輝。
『LINEってふるふるとQRコードとIDでしか繋がれへんツールやないよね』
「……そうやな」
『アホや』
何やねんもう、と再び項垂れる。
「お前大人になっても弄るやん……」
『チョロいもん』
「失礼な!」
『事実やん』
ふと目が合う。私の目が遥輝を捉えるように、遥輝の目も素の私を捉えている。
「『ふっ』」
私達はほとんど同じタイミングで吹き出した。
『遥輝に免じて追加するわ』
「よっしゃ」
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あおやなぎ(プロフ) - はるちゅんさん» ありがとうございます(^^) これからじゃんじゃん進めていくので楽しみにしていてください〜! (2019年9月1日 23時) (レス) id: c05e59e944 (このIDを非表示/違反報告)
はるちゅん(プロフ) - うおっ、最強!更新頑張ってください!お気に入りに入れます! (2019年9月1日 22時) (レス) id: 3445983938 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおやなぎ | 作成日時:2019年8月29日 22時