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今回もまた、助手席に乗らなあかんらしい。抵抗を許さないと言わんばかりに開かれたドアに威圧され、泣く泣く座る。
「あっ、言うの忘れてたわ。今から同期と後輩合流するんやけどええ?」
『はあ?』
そしてまたも私は遥輝に振り回される。車に乗り込むなり、この男は戯言を言い出す。そんな突然なことがあっていいの?
「もしあかんかったら来んなって断るけど」
『アホか、ジャイアンか』
「お、俺がジャイアン……?」
ショックを受けたのか、遥輝は顔を引き攣らせて頬の膨らみをピクピク震わせる。ジャイアンもビックリの横暴さやで、ほんまに。
「俺がジャイアンかあ……」
遥輝はエンジンをかけ、ハンドルを切りつつ遠い目をしながらブツブツ呟く。
『そんなにショック受ける?』
「受けるやろ! うちのチームでジャイアン言うたら大将と宮さんやで!?
あの人達と同列にされんのは結構つらいもんがあるわ……」
うん。大将も宮さんも誰か知らんけど、なんかジャイアンぽい人が2人いるっていうのは分かった。
地下駐車場から地上へ上がれば、札幌の街は寒空ながらも清々しいほどの青が広がっていた。
『てかさ、同期と後輩って誰?』
「谷口雄也と石川慎吾」
『ほお』
「雄也は来季も同じチームやねんけどな、慎吾がトレードでジャイアンツに移籍すんねん。やから、送別会がてら飯食いに行こうって約束しててん」
『そこに私も呼ばれると。……バカなの?』
「ちゃうわ」
気まずいったらありゃしない。何で送別会に初対面の私が参加せなあかんのか。私なんかが来たら、谷口さんと石川さんも落ち着かんやろうに。
もしも私が嫌だと言えば遥輝は2人との食事をキャンセルしていた訳で、さすがに倫理観を疑う。親しき仲にも礼儀あり、と言われるようにチームメイトとの約束は守ってほしいものだ。
でもジャイアンツに行くんやったら……
『ドラゴンズとの関わりもありそうやね』
「そうやな。敵チームやけどさ、慎吾の活躍はお前も見といてほしい」
そう言って真剣な顔を向けた遥輝はどこか寂しそうだった。
しばらく札幌の街を走れば、大柄な男2人が待ち合わせ場所と思わしきバス停前で喋っている。1人は可愛い系、もう1人は爽やかイケメン系の顔立ちだ。
「あいつらスカしてるわあ」
『遥輝に比べたら……』
「おいっ」
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あおやなぎ(プロフ) - はるちゅんさん» ありがとうございます(^^) これからじゃんじゃん進めていくので楽しみにしていてください〜! (2019年9月1日 23時) (レス) id: c05e59e944 (このIDを非表示/違反報告)
はるちゅん(プロフ) - うおっ、最強!更新頑張ってください!お気に入りに入れます! (2019年9月1日 22時) (レス) id: 3445983938 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおやなぎ | 作成日時:2019年8月29日 22時