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愛の形(ybym) ページ6

「あ、あー俺の仕事なくなっちゃったじゃん
どーしてくれるのー?俺今日宿無しじゃん」

涼介は少し驚いた様に俺を見上げながら
抑揚のない声を出す

「俺んち泊まればそれで問題ないだろ」

俺は何を言っているのか
涼介と別れたら謝り倒して伊野尾の元へ行こうと思ってた
きっと怒っているだろうから、
酷いことになると想像がつく
けれどそれさえも受け入れられる
ドMかと思う自分もいる

けれどそんな事口に出した時は頭から飛んでいた

「え、いぃの?」

涼介が驚いた様に大きな目を更に開いて
俺を見上げてる

「じゃなきゃ言わねーよ」

そう言うと涼介の手を離し、
ハンドルを握り直すと自宅へと向かった

家路へ着くと、
言葉を交わすこともなく
どちらからともなく
体を重ねた
俺にとってみれば、初めてだ
男に抱かれる事は腐る程あった
そんな俺が男を抱く側に回るとは思ってもいなかった

女を抱いた事はあったけれど、何年前だったか覚えてない
だから俺が出来るのは、伊野尾が優しく抱いてくれたあの感覚
伊野尾の事を思い出しながら、
それでも目の前の涼介を見つめながら
出来るだけ優しく、出来るだけ愛しく
電気を付けることなく、
服さえまともに脱ぐこともなく
俺たちは体を重ねた

涼介は何度も『宏太』と俺の名を呼んだ
それはとても愛しそうに
まるで子供がしがみつく様に
必死に何度も何度も、そんな姿が愛しい
そう思った

目覚めた時、隣で眠る涼介は
とても幼く見えた
日差しで顕になった涼介の体は
昔の自分によく似ていた
痣だったり、縛られたあとだったり
濃いものから薄いものまで
そんな姿に目を細めてしまいたくなった

白い頬に触れると温かい

「あ、おはよ…」

その手で起きたのか、涼介がぼんやりと目を開く

「宏太、俺たちの関係ってさ
やっぱり仕事の延長…なのかな?」

そう聞く涼介は不安そうな瞳で
今にも泣き出しそうでいた
日頃無表情な涼介の見る
感情的な顔

「涼介、この関係に名前あるなら
それは多分『愛』って、呼ぶんだと思う」

愛がなんだかはわからない
けれど、この感情を『愛』と呼ばないなら
これは何と呼ぶのか

「俺、愛…貰った、の…?」

涼介の瞳から溢れる涙
止まらないその美しい雫は
何よりも温かい『愛』なのだと思った

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作者名:Kanata | 作成日時:2019年7月18日 15時

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