ヒロインはやっぱり私じゃない(確信)【ヒロアカ】 (ページ30)

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第78話ページ30

《爆豪容赦なしー!! やるなら徹底！多分あれだな、完璧主義だな！さぁさぁ時間ももうわずかー!!》

制限時間ギリギリまでこの試合は何が起きるかわからない。
緊張感が絶えず空気を支配し、観客の興奮で熱を帯びていた。

緑谷くんの右腕が轟くんの首元を掠めた。その手には一本のハチマキが握られている。
しかしそのハチマキは1000万じゃなかった。
このままでは決勝進出にはならない。

《そろそろ時間だァ!! カウントダウンスタート!!》

『ああああ緑谷くん……!!』

「おや？本命はあの子かい」

『いやさっきからなんの話してんですか！』

戦況は混沌。
残り10秒を切ってかっちゃんが乱入し、三つ巴の構図となった。

ビーーーーーー!!

《TIME UP!!》

競技終了の音が無情に鳴り響いた。

《第二種目、騎馬戦終了!!》

テンションフル回転のプレゼント・マイクは熱冷めやらぬ声で結果を発表した。

《それじゃあ決勝に進出するチームを発表するぜ！
1位轟チーム！
2位爆豪チーム！
3位心操チーム！
4位 ……なんと緑谷チーム！》

『おおお!!』

思わず私は横になっていた簡易ベッドから立ち上がり拍手した。

「元気だねえ」

リカバリーガールは飲んでいた湯呑を置き、静かに立ち上がる。

『あの……あの緑谷くんがですよ!! すごい……泣きそう』

「アンタは母親かいな。というか完全にいち視聴者になってるね」

彼女は何か手を動かしながら微笑ましそうに目を細めている。
そして私に、処方箋と書かれた袋を渡した。

「これから昼休憩だ。念の為、安定剤と気付け薬を出しとくよ。昼食後に必ず飲むこと」

まだ胸の鼓動が落ち着いていないことを指摘されると、確かに私の心臓は大きく脈打っている。

今回は最中なこともあって、張り詰めた緊張感が余計に恐怖心を煽り気を失うまでに至った、らしい。
普通はまずそんな事起きないらしいけど。

「……今回は不憫だったね。来年、またチャンスがある」

『ああ……全然勝つ気なかったんで、大丈夫です！ありがとうございました！』

お大事に、と言ったリカバリーガールの表情がどこか寂しく見えた。

・

スタジアム内を歩いて出入り口を探す。

響香もうご飯食べてるかな。
弁当、一緒食べられるかな。

心臓はまだドキドキ鳴っていた。
よほど怖かったから？試合を見た興奮？
いや、違う。

胸を強く抑えようも、治まらないこれは、

___言いようのない、悔しさだろう。