ヒロインはやっぱり私じゃない(確信)【ヒロアカ】 (ページ18)

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第66話ページ18

結局、黒板掃除を他のクラスメイトにやらせてしまった。

お陰で綺麗にはなったが、ほぼ他人の力である。
ここはまず私が礼をしなきゃいけない。
私は人当たりがいい風の笑顔を用意した。社会にうまく溶け込むためには必須のアイテムだ。

『ごめんよー！なんかありがとうね！』

「別に」

即シャットアウトされた。
この生意気な口からよく手伝うよなんて言葉が言えたもんだ。
やっぱりこの人とはそりが合わない。合わせる気すらなさそうだ。

再び訪れた静寂に耐えかねた私が会話の種を探していると、意外にも彼の方から話は振られた。

「……ヒーロー科って、授業はなにすんだ？」

『えっ、ああ……まぁ他の科と基礎科目は一緒で、ヒーロー基礎学っていうのがあるよ。結構キツイ』

「へぇ、キツイんだ」

『もうホント、ただの体育とは比べ物にならないくらい毎日しんどいよ〜』

A組以外の誰かにこんな風に話すのは初めてだ。
久々に誰かに愚痴をこぼした気がする。
周りが努力してる中で自分だけが取り残されている劣等感を、晴らそうとしていたんだと思う。

「アンタ、名前は？」

『名前？あっ、工藤Aで____』

瞬間、身体に異変が起きた。

……声が出ない。
……体も全く動かせず、まるで石になったよう。
それに、頭に靄がかかったようにして思考が阻まれる。

__…ヒーロー…で………だな__

何を言っているのかは聞こえないが、急に動かなくなった私を見て不思議に思ってるのやもしれない。ここ最近夜更かしをし過ぎたのだろうか。

「おい、……おい」

『__……！』

肩を叩かれる感覚がして目が覚める。
体感で１０秒くらいだったろうか。
目を瞬かせても、手指も動かせるし、なんともない。

「大丈夫かアンタ。なんかぼーっとしてたけど」

『やー、うん……いや、ぼーっとしてたね！疲れてるのかな？』

喉に触れてみて、声も出せる。頭も冴えてる。
紫頭には明るく繕っておいた。
何だったのだろう、今のは。
一瞬のことだったから、ただの立ち眩みだと思い、とりあえず笑って誤魔化した。

『……で、あれ、なんの話だっけ？あ、名前か』

応答はない。
彼は睨むようにしてこちらを見ていた。

「アンタって、ヒーロー向きの“個性”か」

『ん？』

「もしヴィラン向きの“個性”を持ってても、アンタは、ヒーローになれると思うか」

『……えっと、いきなりだなぁ……』

明らかに困っているような私の笑い声だけが、教室に溶けた。