ヒロインはやっぱり私じゃない(確信)【ヒロアカ】 (ページ17)

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第65話ページ17

時間は過ぎ去り、ついに明日は体育祭。

なんの体作りも準備もしてない私にとっては、本番が近づくのはあまりに早すぎた。未だに実感が全く湧かない。
現在、時計は16:51を指している。

黒板消しが白いチョークの上をなぞる音が妙に大きく聞こえる。
窓から見える夕日は、無垢な教室を一層濃い茜色の空間に作り上げた。

『……ふぅ』

今日の日直当番は私。
こうして一人ポツンと黒板を綺麗にしている。
ウチの委員長はこういう所に細かく目を配るため、雑に行うわけにはいかない。
前に上鳴くんが怒られていた(めちゃめちゃ指導されていた)。私は後が怖いので真面目に取り組む。

さて、日誌も書き、床も掃いた。
今やってるこの黒板消し作業を終えたら帰れるが……雄英の黒板ってなんでこうもデカイんだ。
普通の学校の2倍近くはあるんじゃないか。

『よっ……と』

上の方は軽くジャンプすれば届いた。
普通の女子の背丈じゃ届かないな、これ。

「手伝うよ」

『っ!?』

不意に教室の出入り口から男子の声がした。
驚いて声が出そうになり、私は素早く声のする方を振り向いた。
つい最近見た顔だった。

紫頭くんだ。
うちに宣戦布告をしに来た、あの人。
目の前の飄々とした面構えに何を言えばいいかわからない。

『……あ、あの時の人だよね』

「どの時のことだよ」

………予想よりも風当たりの強い返事にたじろぎそうになるが、めげない。

『えっ……いやホラ、この前かっちゃんに……、爆豪くんに色々言ってたでしょ、みんなの前で』

精一杯、言葉のキャッチボールを途絶えさせないよう頑張った。つもりだった。

「……あー……あれは彼に言ったわけじゃなくて、“A組に”言ったつもりだったんだけど。まぁアンタらにとっては、所詮負け犬の遠吠えにしか聞こえないんだろうな」

『いやいやいや全然そんなことないよ!?』

コイツ私と話す気あるのか。
内心穏やかでいられない私なんて気に留めず、彼は黒板の方へ歩いた。
そして当たり前のように黒板消しを手にし、まだ取り掛かっていない部分を消し始めたのだ。

『え……ありがと……っていやあの！いいよいいよ！』

「どっちだよ。全然消せてないじゃん」

私じゃ届かなかったところの消し残しを、彼は綺麗に消していく。
あれ……？紫頭、わりといい奴なのか？

あれよあれよという間に、黒板は新品さながらのように綺麗になった。

私がやるよりも綺麗じゃないか、と少しばかり負けた気がして悔しかった。