第60話 ページ12
シーン、という効果音が付きそうな静けさに我に返る。
一瞬自分の頭が真っ白になったが、それをすぐに振り払った。
『あっ……ごめん、いきなり大きい声出して！ 轟くんちょっと』
周りが呆然としてる間に彼を手招きすると、察したのか黙って後をついてきた。
人気のないところを探すのは大変だ。
広い校舎を足早に歩く中、どこまで行くんだ、という声に私は足を止める。
さて、どうやって聞き出そう。
『ちょっと遠くに来すぎた……まぁいいや。……あのさ、さっき私の“個性”、風とテレパシーって言おうとした……よね？』
「あぁ」
『あの、なんで、知ってるの？』
単刀直入もいいとこだが、もう直接聞いてしまえ。
焦りから辿々しい口調になるのも構わなかった。
幼い頃の記憶は、今も鮮明にある。
過るのは、宇宙人と除け者にされたり、怖いと泣かれた、気味悪がられる私だった。
目の前の轟くんは至って何食わぬ顔で応えた。
「知ってるもなにも、お前に教えてもらった」
『教えた……？』
たしかに、彼と話すことはあった。でも学校でそんな話をした覚えはない。
「いや、小せぇ頃だ」
『んん……？』
「前に、５歳の頃に会ったことがあるって言っただろ」
『言ったね』
「そん時にお前が教えてくれた。……本当に覚えてねぇか」
『……いやごめん……逆になんで君は覚えてるの？ そんな昔のことさ』
彼は少し考える素振りをすると、ふいと気まずそうに目を逸らした。
「………多分、初めてできた友達が、お前だった」
『へぁ？』
思わず腑抜けた声が飛び出る。
言いにくそうに言葉にすると、少し照れ臭そうに彼の目が伏せられた。
そんな顔、されたら、こっちまで。
『………そ、うだったんだ、ね』
「……なんでお前が恥ずかしそうにするんだ」
『だって！ いや轟くんが！』
何事もなかったかのように平然とした顔に戻った彼を見て、言いようのない気持ちになる。
初めての友達、って。小学生か。
言葉自体よりも、轟くんの口からそれが出たことや、普段寡黙な彼が見せた表情に動揺してしまっていた。
熱い顔をどうにかして、無理矢理に話を進ませる。
『で、でもさ、普通５歳の時にできた友達のことなんて覚えてる？ すごいね轟くんは』
「俺の家は普通じゃなかったからな」
お前だけが唯一、俺と対等でいてくれた。
「___だからまた、
その言葉の意味が、私にはよくわからなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 594人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ペトリコール | 作成日時：2018年9月5日 12時
