ヒロインは絶対に私じゃない(確信)【ヒロアカ】 (ページ9)

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第7話ページ9

《ドアが閉まります。駆け込み乗車など危険な行為はお止め下さい》

プシューーガッ、ギギィ____

異様な金属音が、直ぐ側の扉から聞こえた。
締まりかけた扉には、無理矢理手が差し込まれていた。
驚いて目を瞠ると、私はすぐに顔を伏せる。
少し息を切らした男子が目の前に滑り込んできた。
危険行為なんて知ったこっちゃねえってか。
……さすが、爆豪くんだ。

彼は一瞬こちらを見て舌打ちをした後、苛立ちを隠さないまま扉に凭れかかった。
人混みの中で最後に乗った私達は、並んで扉に背を預けるしかなかった。
正直、とても気まずい距離だ。

「____A」

………びっくり、した。
突然、隣から呼び声がして肩が揺れる。

声変わりした彼の低い声には未だに慣れていなかった。
だから、変に焦った。

『爆豪くん、今のスゴいねー』

「……次のまで時間かかっから」

『へぇ』

温度のない声で、彼は扉に頬杖をついた。
次のは数分待てば乗れるけどなぁ。

がたんごとん。

再び、無の時間が漂う。
電車はゆっくりと動き始める。

この路線はよく揺れるのだ。
ここだけ地盤が歪んでるんじゃなかってくらい。
車体は安定しないが、この缶詰状態の中なら多少揺れても大丈____

『わ、』

ぶじゃなかった。

体は突如左右に大きく揺れ、バランスを崩す。
可愛げない声を出しながら、痛みを覚悟し目を瞑った。
ぽす、とクッションのような感触。
なんとなく、嫌な予感がした。

「___んな、」

『うっわぁ……』

案の定、どこからどう見ても、私が爆豪くんに抱きついているようだった。

少し上を見上げれば、心底屈辱的な顔がある。
私は彼の胸元に寄りかかっていて、温かさがゼロ距離で頬に伝わる。

なんか、男の体って感じ。かったい。
じゃない。いやね、悪気はなかった。

『いやぁごめん！爆豪くんごめん！』

笑って済むならこんな悲劇生まれない。泣きそう。
怖すぎて表情は伺えないが見るからにキレてる。
頼むから公衆の場で怒鳴らないでほしいと願うが多分無理だ。

彼がわなわなと震え拳を振り上げるのを見て、命中は避けたいと思いながら目を瞑った。

「……んのッ、クソブスが！！」

衝撃はやってこない。
薄ら目を開けると、このときの彼の顔はなんとも形容しがたい顔をしていた。
とにかく爆死は免れて一息つく。

『マジゴメン』

「なら死ね」

『ひどいなー、あはは』

……なにこれ。

そのまま駅に着き、降車。
最悪な空気が漂う、幼馴染との帰路。