第47話 ページ49
「こっちはそんなに時間がないんだ。あんま手間かけさせんなよ。イレイザーヘッドの姪っ子」
言葉を発せられないほどの緊張感に、私はこのまま殺されても可笑しくないことを察した。
ある知恵を振り絞れ。
頭を回せ。
考えろ、考えろ……！
『………な、んで、私が、イレイザーヘッドの姪だって知ってるんですか？』
そんな問に真っ当な答えが返ってくるわけがなかった。
「……さぁ？」
『、っは___』
かさついた皮膚の感触がした瞬間、
触れられたと理解して頭が真っ白になった。
首の圧迫感を感じて、肌が焼けるような痛みが僅かにしたが、一向に死に悶える痛みはやってこない。
「……本当、カッコいいなぁ。イレイザーヘッド」
『……え……っ』
ボロボロの体がその充血しきった目で、イレイザーヘッドが此方を捉えていた。
脳無は容赦なく彼の顔面を地面に叩きつける。
脱力した彼の姿を見て、咄嗟に名を呼びかけたそのとき。
「手ェ、離せえぇッ!!」
遠くから緑谷くんの声が聞こえてきた。
彼の拳にエネルギーが集まり男に向けて拳が放たれる。
物凄い威力が爆風を生み、男の手から私は開放された。
しかし強烈なパンチは、一瞬のうちに移動してきた脳無によって受け止められていた。
脳無は緑谷くんの腕を掴む。
動こうとする私に伸びる、大きな手のひら。
広がっていく血溜まり。
視える未来は絶望だったそのとき___開け放たれた入り口から差し込む眩い光とともに、
「____もう大丈夫。私が来た……!!」
一筋の希望の兆しが現れた。
「オール、マイト……」
『遅い……』
誰もがその姿に圧倒されていた間に、彼は私たちを助け出した。
重傷のイレイザーヘッドもそこに抱えられていた。
状況に安堵する前に、目の前の出血多量の男を睨む。
『ほら、起きなよ』
なにが、一芸だけじゃ務まらないだ。
悲しさやら怒りやら悔しさを混ぜた感情が、視界を滲ませた。
『あんた、ヒーローなんでしょ……こんなとこで、なに寝てんの、ねぇ』
「工藤少女、ひとまず落ち着くんだ。こんな状況だからこそ冷静で正確な判断が伴う。……相澤君は意識がない、早く！」
その言葉でようやく頭が冷える。
オールマイトの言葉は正しく、なにより頼りになった。
「Aちゃん、行きましょう」
『……ごめん梅雨ちゃん。急ごう』
緑谷くんに肩を任せ、足は私と峰田くんで持ち相澤先生を運ぶ。
弱りきった体は、まるでマリオネットのようにされるがままだった。
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作者名：ペトリコール | 作成日時：2016年6月1日 23時
