ヒロインは絶対に私じゃない(確信)【ヒロアカ】 (ページ47)

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第45話ページ47

話し声がする。
ヴィランがそこにいる。
なにも、頭の中に入ってこない。
このままだと、やばい。

まるで鈍器で殴られたような鈍い痛みは、徐々に強くなっていく。
地面が踊っていて足元がおぼつかない。
目の前でチカチカと白光が走る。
これは本気でまずい。
なんとか視界を元に戻そうと目を瞑った。

しかし私は体を支えきれず、とうとう前のめりに倒れこんだ。
頭から地面への衝突は避けたが、胸へ強い圧迫がかかる。

苦しい。
頭がぐらぐらして、割れそうなほどに痛い。
それでもまだ、なにもできてない。
なにもしてないのに、倒れられない。
地べたについた手に力を込め上半身を起き上がらせた。

恥ずかしい、と思った。
この状況で、こんなにも弱くて、どうしようもないほど無力で。
目の前の敵はこちらを見向きもしない。
空っぽな自分がとても惨めに感じた。

次第に視界が元に戻ってきて、私はやっとの思いで両足を地面に立たせる。
すると突如、崩壊男の様子が変化した。
息遣いを荒くし、首を掻き毟り始める。

「黒霧……お前がワープゲートじゃなかったら粉々にしてたよ……!!」

さっきまでの気怠げな態度から一変、苛立ちを抑えきれずにいた。
その異常な様子に私は反射的に身を強張らせる。
すぐに、男はなにか呟くと怒りを静めた。

「あーあー今回はゲームオーバーだ。帰ろっか」

あっさりと、ゲームに飽きた子供のような言い方だった。
情緒が定まらないこの男の、まるで子供のような不安定さが不気味に映る。
オールマイトを殺そうと奇襲してきた奴らが、そう簡単に撤退するような手先のはずない。
何か仕掛けようとしてる。
そんな予感から咄嗟に、周りの"声"を聴く。

一斉に聴き取りそれらを選別するには集中力を要する。
その中で、より強いものを拾う。

〈どうしよう……13号先生……〉

〈これからどうするか……耳郎さんと上鳴さんとここを抜けるには……〉

〈本命は……広場か〉

〈ワープ野郎ぶっ飛ばす〉

……出入口にいる人たちの様子がおかしい。13号先生が心配だ。
それに、かっちゃんと轟くんがこっちに向かおうとしてる。
ここに来るのはダメだ。危険を知らせた方がいいだろう。

近くの水難ゾーンには３人。
念のためにテレパシーを使用して彼らを避難させるべきか。
でも、うまくいくとは思えない。
あとは消太おじさんをどうにか_____

「_____Aちゃん逃げろっ!!!」

『っへ、』

三日月のように細められた赤い瞳が間近にあった。