ヒロインは絶対に私じゃない(確信)【ヒロアカ】 (ページ45)

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第43話ページ45

耳元で低音が落とされる。
肩に回された手が強まった。

「……いいかA。今は自分を守るために動け。最大限知恵を働かせろ。絶対に諦めるな。こんなワケわからん連中相手に、戦闘で勝つ必要はない。お前の足が最後まで立っていることが、勝ちだ」

いいな、と後付けされ、私の背中に風が入り込む。
ひんやりと背後の温かみが消えた
あらましゴロツキは片付けたようだが、彼が無茶をしているのは私でもわかる。
不安だった。
一緒に、この場を離れてほしかった。

『待って！１人でやる気!?』

「他の生徒たちと合流できたらすぐに固まって行動するように言え！避難経路が確保でき次第すぐにここから離れろ！」

『あんただけじゃ____後ろっ!!』

さっきの男がこちらに向かって来ていた。
その走り方すら異様さを感じる。
イレイザーヘッドが肘鉄を食らわせるが、それはガードされていた。
直後、私は信じられない光景に目を見開いた。

「動き回るので分かりづらいけど、髪が下がる瞬間がある……ワンアクション終えるごとだ。そしてその間隔は、段々短くなってる。無理をするなよ、イレイザーヘッド」

叔父の肘は、赤い血肉が見えるほど崩れていった。

あれが、あの男の“個性”なのか。
触れたものを壊す、腐敗させるような力。
この世にそんな“呪い”があることに悪寒を覚える。

ただ闇雲に走っていたように見えた男が手を後ろへ広げていたのは、“個性”を使用するためだった。

「その様子じゃ、集団との長期決戦は向いてなくないか？普段の仕事と勝手が違うんじゃないか？君が得意としているのは、あくまで奇襲からの短期決戦じゃないか？それでも真正面から向かって来たのは生徒に安心を与えるためか？」

イレイザーヘッドは残党を肘を庇いながら倒していく。
その表情に、余裕はもうない。
このヴィランは、本当にイかれている。

「かっこいいなぁ……！かっこいいなぁ!! ……ところでヒーロー……本命は、俺じゃない」

『っ、おじさ____』

自分の声は、情けないくらい小さかった。
イレイザーヘッドの背面に立っていた、脳味噌を剥き出しにした異型の怪物。

なんで気づかなかったんだろう。

見ていたのに、
ただ、見てただけだったのに、

既に、目の前で鮮血が舞っている。

『____ぃあ、あぁ、ぁ_____っ!!!』

膝が震えて、立てそうにない。
手も足も冷たく感じる。

怖くて、恐くて、声にならない声が溢れた。
世界の輪郭が歪んで見えた。