ヒロインは絶対に私じゃない(確信)【ヒロアカ】 (ページ39)

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第37話ページ39

轟くんは私に対して優しすぎた。

英国ではあるまいし、女子に手を差し伸べてくれる男子なんて初めて見たわ。
壁ドンまがいのことをサラリとやれるのだって、あれは顔がいいからこそ成せる技であって。
自覚無しでやってるなら、君、どんだけハイスペックなんだ。

「A、さっきから人の話聞いてんのか」

『えっごめんなんにも聞いてなかった』

「耳郎が呼んでる」

彼が指す方には、響香が私の名を呼んでいた。
人波はすっかり無くなっており、皆それぞれ自分の食事に戻っている。

『響香、生きてたの！じゃあ轟くん、また』

「あぁ」

ヒラリと手をかざせば、彼は小さく微笑んでいた。いま背景にキラキラのエフェクトが見えた気がする。
……きっと、彼は天然なんだろうな。
そう思いながら、響香に「ご飯食べ直そう」と言った。

・

午後の時間、他の委員の取り決めの時間で、緑谷くんは思わぬことを言い出した。

「やっぱり……委員長は飯田天哉くんがいいと思います！」

私にはなんだか緑谷くんらしいなあと思えて、小さく笑みが零れた。
彼の考えに他の皆も賛同し、正式に飯田くんは委員長となった。
ほら、やっぱり飯田くんが委員長にぴったり。

その後、上鳴くんの昼間の飯田くんが非常口みたいだったという発言がなぜかツボにはまって一人腹を抱えていた。

『はははっ、非常口！！』

「Aちゃん変なところにツボがあるのね」

「工藤静かにしろ五月蝿い」

隣の梅雨ちゃんに真顔で背中をさすられ、相澤先生には叱られた。上鳴くんのセンスを恨む。

・

今日も一日ご苦労様でござった。

と、心の中で自分へ労いの言葉をかけ、バナナオレのボタンを押した。

イヤホンからラジオを聞きながら帰路につく。
夕暮れを１人で歩くのは心細い気もするが、なかなかこの時間も嫌いじゃない。
オレを飲みながら歩いていると、この時間には珍しい人物が見えた。

『あ！イレイザーヘッド～！』

「馬鹿野郎、こんな住宅街で呼ぶな」

消太おじさんは普段通り黒い暗い服を着て歩いていた。いつも思うが不審者にしか見えないので他の服を着てほしい。

『ごめんわざと。珍しいじゃん、消太おじさんがこんな早いなんて』

「今日のことを直接お前に伝えておきたくてな。……で」

「お前この時間にいつも帰ってるのか」という声にうん、と頷いた。

「……最近物騒だろ。明るいうちに早めに帰れ」

『は〜い』

先生みたいだとからかったら頭を小突かれた。