ヒロインは絶対に私じゃない(確信)【ヒロアカ】 (ページ29)

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第27話ページ29

小走りで来たせいで少し息が上がっている。
教室までの道のりは長かった。

最大限ミュートした声で、失礼しますと断りつつ、スパイになった気分で教室の扉を開ける。
何人からか視線が飛んできた。

「工藤、具合はどうだ」

相澤先生の声に、もちろん私は笑顔で答えた。

『あっ、なんか全然大したことなかったです。すんません、初っ端から怪我なんてして』

「……まぁそれは３人とも反省しろ。オールマイト先生も心配していた。後で謝りに行け」

『はい』

少し苦笑いしながら席に座った。
切島くんは私を見て、大丈夫かと一声かけてくれた。

「女子の顔にあれはなぁ……」

『ちょっと当たったくらいでそんなに変わらないよ』

「いやそれは前向きすぎんだろ」

授業はたった13分で終わった。
当たり前だが、内容はさっぱりわからなかった。

・

帰り支度をしているとき、緑谷くんが腕にギブスをして教室へ戻ってきた。
向こうは驚いた顔をしているが、こっちが驚きたいくらいだ。

『もう大丈夫なの？』

「それはAちゃんこそ……！ごめんね……」

『いやなんでそっちが謝るの。ボケっとしてた私が悪かった。9割爆豪くんが悪いとは思うけど』

「でも本当に焦ったよ……そういえばかっちゃんは、____ヒェ……」

『え？』

緑谷くんは私の後ろを見て顔を青く染めた。
なんだと思い振り向けば、爆豪くんが私の背後に立っていた。

『び、びっくりし、っうぉあ』

「あれ、爆豪先に帰ったんじゃ……」

芦戸さんの声が聞こえたがそれどころじゃない。
右腕がもげそうなほどの力で急に引っ張られると、私はよろめきながら爆豪くんによって連れられる。

『えっ、あのっ、ちょっとおぉ!?』

彼は無言のまま何を言っても止まらず、そのまま下に降りて外へ出た。
ずっと腕を引かれたまま。
一体いつまでこの状態なのだろうか。

『あのー爆豪くん……腕を……』

そこで爆豪くんはロボットのように止まった。
後ろから緑谷くんの制止する声がしたからだ。

２度、“かっちゃん”の愛称を呼ばれた後に、「あァ？」と低い声が呼ばれた方を睨む。
ヤンキーのお手本になれそうな形相だな。

「これだけは、君には言わなきゃいけないと思って」

緑谷くんは俯きがちにポツリと話し始めた。

「僕の“個性”は人から授かったものなんだ」

鬼のような爆豪くん。
その手に繋がれる私。
対に立つ緑谷くん。

幼馴染の間に変な空気が流れ始めた。